カテゴリー「ゆるふわ非日常」の記事

2016年11月13日 (日)

world traveler

instagramってやってるかい?

おれはどのSNSやったって頻繁に更新したりいきなりパッタリやめたりして、学ばない野郎だ。

 おれの挙げる写真は演奏旅行中の写真が多い。非日常めいてるときの写真ばっかさ。ニュースサイトをだらだら観てたらinstagramの嫌われるユーザーの例でworld travelerというタイプが出ていた。world travelerはリゾートバカンスや世界の名所の写真ばかりinstagramに投稿して、日常の自分の写真は全然あげねえんだと。instagramの使い方わかってねえ、寒いやつだって嫌われるらしいぜ。

 おれのinstagram がツアー中の写真ばっかりなのは正にworld travelerじゃねえかって思って落胆したよ。

 もっとマシな奴でいてえなって思って、最近撮った写真探してみてたらさ、データにあるのはレコーディング中の写真とか、バイト先で撮影した本日のパスタとか、ネット上に晒しちゃいけねえようなデータばかりでツマンネエ毎日送ってやがんなと思った。

 とりあえず二枚だけ久しぶりにあげてみたよ。職場とか左右田さんには黙っててくれよな。内緒だよ。

あげ茄子のトマトソース

ngbarbaroiさん(@n.g.barbaroi)が投稿した写真 -

2016 11月 12 6:14午前 PST

 でさ、instagram観てたら、昔の知り合いが「知り合いかも?」みてえな機能でユーザーアカウント表示されたんだ。

あれってすげえよけいな機能だと思わないか?

 確かに友達さ。でも人間を何年かやってるともう二度と会いたくないような友達もできるんだぜ。極左の前衛美術家とかさ。

 あの余計なお節介機能で「友達かも?」って昔のおれのバンド仲間が表示された。アカウント名がアフリカの議長と無政府主義を併せた悪意ある名前だから間違いないさ。誰のことだかわかったやつもいると思う。本人には言うなよ。

 そのアフリカ無政府主義者とは仲違いした訳じゃねえんだけど、あいつが別のおれの地元の親友と大喧嘩しちまったから、なんとなくおれも疎遠になっていた。

 風の噂では、子どもが生まれたって聞いてた。

 あいつに子どもが!って思ったよ。

 だってなあ、あいつはブコウスキーどころかバロウズまで全部読んでるようなやつだ。クレイジーと思わないか?

おれたちの中のいったい何人がバロウズを頭からケツまでバロウズを読みきったんだい?おれもバロウズ持ってるけど全部読みきったことがあるのは裸のランチだけだよ。あれはとっても大変な体験だった。 

 テクノのジェフミルズだったりセオパリッシュとかさ、フリージャズってかサン・ラが好きで、クリストやデュシャンやダダイズムの美術を愛してるやつだった。一緒に美術館に行ったり、レコードを掘りに行ったりしたよ。

 とにかく超先鋭的な感覚の持ち主なんだ。

 最後の頃はムーンドッグのレコードをかけながら「もうNGにはわかんないかもしれないな」って言われたこともあったな。あのムーンドッグのアナログ買ったよ。ムーンドッグな、やばいよな。

 中学生の頃からあいつとはつるんでて一緒に遊んでたけど、おれらが遊んでた最後のころは、お互いの家に行って、買ったきたレコードを二人で聴いたりしてただけだった。

 とにかくバンドやめてからのあいつはヴィンテージ機材の要塞を築いて宇宙のようなトラックを作ってたよ。あいつの書く文章も絵も素晴らしかった。昭和の漫画と現代美術がそのまま融合した画風だったさ。

恐ろしいレコードと、本のコレクションを持っていた。とにかくおれにとっては先生だったのさ。

 あいつが子どもが産まれたって噂で聞いて、きっと音楽を辞めちまうんじゃないかって思ってた。

 だってさ、あのコレクションと要塞を維持するのはむちゃくちゃ大変で、言っちゃえばバンドやるより大変な話だからな。勝手な想像だけど、また音楽を創ってる友達が一人減ったんじゃないかって、哀しんでたんだよ。

 

 だけど違った。

ネット上で再会したあいつのinstagramに出てきたギャラリーには、相変わらずの惚れ惚れする音楽の要塞の画像が沢山あったんだ。音楽辞めたと思ったのは、まったくおれの自分勝手な思い込みだったんだ。

MPC60、TR707、MS10、nordの鍵盤、mackeyのミキサー、二人で曳舟のヤク中から買い取りに行ったKP2、音のぶっといRODECのテクノミキサー。それだけじゃない。ミキサーの前にはフェーダーを弄る小さな子どもの写真があったんだ。

わかるかい?おれはブッ飛んだ。

感動したんだ。あいつの子どもがミキサーと一緒に映ってやがる!!

 おれはてっきり家庭を持ったり、子どもが生まれたら、音楽を手放さなきゃならないと思ってたんだ。普通の人間にならなくちゃいけないってさ。

 バンドやっても粋がってるだけでリアリティーねえ感覚の持ち主なんだよ。音楽を手放せるのか?いったいどうやって?

おれたちが、何があってもどこかに戻れるわけなんかないんだ。進むだけさ、

 アフリカの無政府主義者は狂ってる。あいつは自分の子どもに自分の音楽を聞かせてるに違いない。サン・ラを、ブラックジャズを、あいつ自身の作った毒性の高いトラックを聴かせてるに違いない。

あいつが音楽をやめるわけなんか無かったんだ。あの要塞の中で子供と遊んでる。子ども育てながらトマス・ピンチョン読んでやがる。表紙をインスタにあげてやがる。ちゃんと読んでんだなって思った。「重力が衰えるとき」っていう未来イスラム探偵SF小説を教えてくれたのもあいつだったよ。

もしかして最低かもしれないが、SF読むより、トラック作るより、悪いことも世の中にあるぜ。それよかおれたちが信じてきた音楽や文化はムチャクチャにピースだよ。

人をダメにするかもしれないけど、人を救うことだってあるんだ。少なくとも、おれやあいつにとってはそうだ。

 おい、バンドやって音楽やってるような面してる奴が何人トマス・ピンチョン読んでるんだ?バイトバイトバンドバンドで本なんか読んでねえだろ。おれだってチョンピン読んでなかったよ。

 おれはあいつのinstagram見ただけで、負けたと思ったし、やる気になったぜ。

 面白くねえ人生なんてクソだ。

 おれたちは誰も読まないような本を読んで、誰も聞かないような音楽を聴いて、とんでもねえ音楽を作って、情熱をもって、独自のやり方で幸せになろうぜ。

 おれはworld travelerを辞めることにした。

 全然特別じゃねえ、今、この時から発信していくからな。

これからもよろしく頼むよ。

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2016年9月 2日 (金)

職務質問

 一日の時間労働を終えておれは井の頭公園のベンチで寝そべってた

夏が終わりかけていて虫たちの出すリングモジュレーターかけたようなサウンドスケープに包まれている。

湧水池を渡す橋の向こう側には真夜中の動物園があって、時折ギャッギャッギャ。んもんもうぃー。という鳴き声が聞こえてくる。

おれは湖畔に腰かけてあいつらの声に耳を傾けるために真夜中の公園に来る。あいつらの声、不思議だ。なんていう動物の声なんだ?

台風が来たり来なかったりして、おれが働いてるレストランは退屈だった。退屈でも退屈じゃなくても閉店まではいなくてはいけないから、店閉めてダストボックスにでかいゴミ袋放り込んで仕事を終えて、たいして疲れてはいないけど公園に一眠りしにきたってわけだ。

この後は、朝まで驢馬のスタジオだ。9月になりライブが三本決まってる。19日に両国と、23日には柏、25日は多摩センターの野外ライブがある。だから久しぶりにライブのためのリハーサルに入る。驢馬は今までレコーディングのための頭使う作業ばかりだったから楽しみだった。

あと30分、眠ろうかどうしようか迷っていると自転車が近くまで来て止まった。二人組の警察官だ。

「ちょっとお兄さん、時間いいですか?」

よくねえよ。と思いながら起き上がった。

「鞄の中を見せていただきたいのですが…危険なものは持っていないですよね」

 

持っていたって言わねえだろ。おれの今夜の持ち物は驢馬のために使うエフェクターとギターだ。最高の凶器だ。触るんじゃねえ。と思いながらもおれはとても気の優しい小心者なので「どうぞ。」と言ってしまった。ファンの皆にはなんて申し開きしたらいいかわからない小市民ぶりじゃねえか。

「楽器はギターなんですか。これは。」

 

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「ガットギターです。」

こういうやり取りは初めての演奏場所やツアー先でもよくするやり取りだ。だから慣れたもんさ。しかしエフェクターケースを探ってた警官は怪訝な顔でしつこかった。

「この金属の棒はなんですか?なにに使うんですか?」

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「スライドバーです。ギターの弦の上を滑らせるんです。」

 

「これは金属の歯が付いていますね」

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「ソムリエナイフです。ギターの弦に挟みます。倍音をだすんです。」

 

「やすりがありますが、何のために使うんですか?」

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「ギターの弦に挟むんです。あと爪を切るときに」

 

「拡声器がありますね」

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「楽器です。これでハーモニカを吹くんです。」

 

拡声器は不味かったみたいだ。あと巻きタバコのシガーケースも不味かった。

 

「これはタバコですか?」

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「タバコです。演奏には使いません。」

 

「楽器は趣味でやられているんですか?」

 

「いえ、プロです」

おれはハッキリそう言った。

 

財布の中のカードの名前を確認していた警察官が

「芸名とかあるんですか?違う名前のカードとかお持ちじゃありませんか?」

 

とか抜かしやがった。

 

「芸名はNGです。」

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警官は「?」の顔のまま固まった。

このクソが。時間の無駄だ。

 

 くだらないやり取りを終えておれは驢馬のスタジオに向かった。あの警官ふたりはもしかしたら死ぬまでガットギターの音を聴かないかもしれない。スライドバーや況んや鑢やソムリエナイフで演奏されたギターの音を聴かないかもしれない。フリーインプロヴィゼーションという音楽がこの世にあることを知らずに死ぬかもしれない。拡声器でアンプリファイされたブルースハープの音を聴かないかもしれない。おれの拡声器は録音できてヒップホップのサンプラーみたいなことだってできるんだ。ヒップホップくらいはわかるだろ?おい。

驢馬は三枚目を作っている。

その蹄で乾いた土地を踏みしめ、病めるものにも富めるものにも、音楽の素晴らしさを届ける日は近い。

警官たちが知らなかったガットギターやスライドバー、ソムリエナイフ、鑢、拡声器の音楽を不信感に支えられたこの世界に鳴り響かせてやる。

心して待て。

驢馬 gig schedule

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9月19日(月・祝)

■両国SUNRIZE
Very Ape企画
「戦慄のオルタナティヴ祭 vol.3」

 

【出演】
驢馬
MUSHA×KUSHA
ドブロク
デッドバンビーズ
妖精達
クロメ
赤い月
暗黙のストライカーズ
Very Ape

【開場】 15:30 【開演】 16:00
【前売】 2,500円 【当日】 2,800円(各+1drink)

両国SUNRIZE

http://www.livehousesunrize.jp/

〒130-0026
東京都墨田区両国4-36-6ガラス会館B1F
TEL/FAX : 03-5600-7337
MAIL : info@livehousesunrize.jp

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9月23日(金)

■柏616
【プピリットパロツアー「パロイズ革命TOUR2016~柏編~」】

w/プピリットパロ/vono vomno/river(ロマンチック日本代表!!!)/…etc

〒277-0021 千葉県柏市中央町7-26 栄ビルB1F
[柏616] TEL 04-7168-3616 FAX 04-7128-7111 MAIL info@kashiwa-616.com


http://www.kashiwa-616.com/
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9月25日(日)

■多摩センター三角広場
【青空を鳴らせ】

BadAttack / DanceWithMe / FirebirdGass / 我ヲ捨ツル / BlueVision / Horse&Deer / Hi-Gi / ENSLAVE

AM11:00スタート
FREE Live!

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2015年9月16日 (水)

だがこれはギャンブルではない

2015年、9月16日水曜日に日付が変わった頃。
 驢馬の2枚目のアルバム、「DAMAGE」の発売日だ。驢馬は去年の暮れからこの日に向かってずっと準備してきた。大変なエネルギーと時間を注いだプリプロダクション、意外なほどに瞬間的に終えることができたレコーディング。武道の試験のような雰囲気だった。何度も何度も練習した技を一瞬のうちに披露する。そんな真剣勝負の感覚だった。それから7時間近く水に浸かっていた水中のジャケット写真撮影。中学校を借りきって撮影したプロモーションビデオ撮影。2015年行ったありとあらゆる行為がこの発売の瞬間に向けて用意されたものだ。

 昨晩はおれはレストランで久しぶりにピザ場に入って調理していた。だが、あんまり混まなかったので、もう一店舗にヘルプに行って皿をひたすら洗っていた。戻ってきてタイムカードを切ると、ドラキュラみたいな店長がアルバム発売を祝って一杯おごってくれた。
「"金がなくては"という曲と"金なんか無くてもどうせ死なねえ"という曲があるんですよ。」とちょっと歌ってあげた。すると調理場に来ていた他店のシェフが「それってヒップホップなの?」と聞いてきた。ドラキュラ店長は「聴いたらあんまり激しくてメタルかと思いました」と言った。「パンクでもありますね。」「疲れてるときに聴いたらビックリしました」「疲れてるときに全くお勧めしません」

 それからアルバムができるまで、様々なことをしてきたことを話した。シェフが「それは賭けだね」と嬉しそうに言ったのが嬉しかった。
「ええ、賭けなんです。だからおれは私生活ではパチンコとかギャンブルは一切しません。」

 帰る前に近くのスタジオやライブハウスをのぞいて、ポスターを貼らせてもらえないか頼んだ。明日はどうなるだろうと考えていた。仕入れてくれた店舗に挨拶に行こうと思っている。スーツを着て、正装で出掛ける。CDをリリースする流れは少しずつわかってきたが、リリース前の泡たつような気持ちにはどうにも慣れない。

泉谷しげるの春夏秋冬の歌詞のような思いだ。深夜3時頃に家に帰ってきたが全然眠れなかった。

何かが始まる



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2015年9月11日 (金)

すべての不良少年がドストエフスキーを読んだら世界は変わるかもしれない

 驢馬のスリーマン「男根」と「男根ぶら下げ三千里ツアー」のスケジュールが発表された。

〈DAMAGEレコ初スリーマン「男根」〉
2015年10月4日(日)東高円寺二万電圧
時間 : Open 18:30 Start 19:00
料金 : 前売 1,800円 当日 2,300円(+1d 500円)
出演 : 驢馬 / FIREBIRDGASS / GROUNDCOVER.

〈驢馬-ロバ-「男根ぶら下げ三千里ツアー」2015〉
2015年10月6日(火)神戸スタークラブ
2015年10月7日(水)高松TOONICE
2015年10月8日(木)徳島CROWBAR
2015年10月9日(金)松山doubule-u-studio
2015年10月11日(日)横須賀かぼちゃ屋
2015年10月16日(金)酒田Music Factory
2015年10月17日(土)秋田Re:MIX
2015年10月23日(金)新宿LOFT
2015年11月6日(金)滋賀U Stone
2015年11月7日(土)甲府CONVICTION
2015年11月11日(水)渋谷CYCLONE(アウトストアイベント)
2015年11月12日(木)大阪心斎橋HOKAGE
2015年11月13日(金)尼崎Deepa
2015年11月14日(土)名古屋DAY TRIP
2015年11月15日(日)和歌山OLD TIME

ファイナルワンマン
2015年12月13日(日)渋谷CYCLONE


 今年は製作が多くて旅に全然出ていなかったからすごく楽しみだ。驢馬は旅に出ているのがいい。東京にいるときは思惑だとか牢獄が多くて、五頭も驢馬がいると少し窮屈だ。

 こういうちょっとした全国ツアー(全都道府県ではないけれど)をまわるようになって思ったことは、アルバイトやりながらツアーを回るとは思ってなかったということだ。全国ツアーをやるようなバンドはレーベルから予算が降りたり、ギャラがウッハウッハしてるのかと思っていた。潤いとは言わないまでも音楽だけで食えているのかなーと思っていたけど、なんのことはない、おれたちがVANISING RECORDレーベルの中の人だからおれたちがツアーの予算を出さなければ誰も出さない。単純な話に過ぎない。

 インディーズでもいろんなやり方があるだろう。まだまだ試行錯誤の途中だけれど、おれたちが誇りを持って言い切れるのは「有り金はすべて制作費にぶちこんだ」ということだ。

 もちろんメジャーレーベルのアルバム制作費とは比べ物にならないだろう。クソが!!!でも、すべておれたちが決断して進めたこのプロジェクトは絶対にメジャーレーベルのアルバムにひけをとらないと思う。無名だから無敵なんだ。驢馬は5人が全員プロデューサーで、プロデュースというのはワケ知り顔のおっさんが鼻くそホジリながらMacをいじる作業じゃねえ。本当に愛して産むからのプロデュースをやったと自負している。

 おい、涙が出てくるくらい良い話じゃねえか、そう思わないか?思わないか。

 ただまあ若干トンチンカンかもしれないけれど、何かの目的を遂げようとして、そのために稼いで、お金を投資できることはけっこう幸せなことだなと思う。ましてやいい年コキはじめた大の男が五人も集まってそういうことをできるのはクレイジーだし、そういう奴らが集まっていれば何かを変えられるかもしれない。
「何かを変えられるかもしれない」なんて現代日本社会で成人男性がほざいていたらアホと思われるだけだけど、音楽にとって「何かを変えられるかもしれない」という「何か」のムードよりも大切なことは無いんだ。だからアホと思われようとマジでやってる。若干じゃなくて相当トンチンカンなところもあるけれど、それくらいのユーモアがないとやっていけないさ。何かを変えるためには。

 そんなこんなでおれは昨日も終日レストランで時間労働だった。

台風だったためかランチタイムには全然お客様はいらっしゃいませんでした。
ランチのラストオーダーの間際になって、自分がドルチェの入っている冷蔵庫を開けようとしたところ、冷蔵庫が傾いてしまい、スタッフ全員で治そうと冷蔵庫を持ち上げ動かしたら、冷蔵庫の陰にあった配水管に接触して折れてしまい水が漏れてしまいました(社員への報告メールから転載。)

 とにかく水が溢れだして止まらず、古い建物のせいか、元栓もなかなか閉まらず、自分は菅の破損箇所をワインの栓がわりにしていたバナナ型のゴム製コルク(店長の私物)で強引に力で押さえ込んで止めるというzampano芸をしているとみるみるうちに水を全身に浴びてびしょ濡れになってしまいました。

 びしょ濡れになりながらずっと考えていたことは驢馬の新しいプロモーションビデオが今夜発表になる。そのビデオを紹介するコメントを考えなければいけなかったのだ。おれはずぶ濡れになりながら考えた。ファンの女性から朝「驢馬って大人と子どもの間って感じがありますよね」というメッセージが来てたことを思い出した。大人と子どもの間ってなかなかヤバイな。おれたち大丈夫かな?とも思ったけれど、ずぶ濡れになって配水管の水の噴出を抑え込んでいるおれはけして大人とは言えない。とはいえ子どもとも言えない。子どもだったらぼんやり観ているだろうなと思った。中途半端な責任感があるからずぶ濡れにになるわけだし。逆にもっと対処力があれば水の元栓を探して止めるだろう。そうしないのは「おれ別にバイトだし」店の元栓なんか知ったこっちゃねーからだ。

 そして誰も元栓を止めないまま自分は溢れ出す水の中はいつくばってずぶ濡れになっていきました。誰も店の元栓を知らなかったのです。そのうち上司の上のさらに上司のKさんがやって来ました。水は止まりました。元栓を閉めていただけたのでしょう。ホッとしたのもつかの間、Kさんは鬼の形相で怒りました。

「おいおい!おいおいおいおい!!何やってんだテメー!!!なにしてくれちゃってんだよ?!?!?!」

「配水管が折れました」

「なんで配水管が折れるんだよ?!テメーが折ったんだろうが??」

「冷蔵庫を動かそうとしたら接触してしまいました。ここに配水管があるとは知りませんでした」

「おれだって知らねーよ?!知らねーとこなにさわってんだよ?!?!だいたいなんで冷蔵庫動かしてんだよ?!?!?!」

「冷蔵庫の扉を閉めたら突然傾きました」

「そんなわけねーだろ??こんな足場で支えてんだぞ!!!!テメーが傾けたんだろ?!コラ!!!!」

「その足場から支えが崩れたんです。もしかしたら足場に隙間があったのかもしれません」

「は?!!?!なんで気づかねーんだよ!!!!?!?!気づくのがテメーの仕事だろーが!!!!そんなテキトーな仕事してていいと思ってんのか?!??ああ?
!!!!?」

「気づきませんでした」


 と話ながらおれはまったく全然別のことを考えていた。なぜ別のことを考えれたかと言うと、Kさんに言われることはびしょ濡れのバナナで流れる水流を抑えながらすでにシュミレーション済みであり、何て言われるか何を答えるかもうわかっていたからである。おれは怒声を浴びながら思い出した。

「すべての不良少年がドストエフスキーを読んだら世界は変わるかもしれない」

 なんの小説で読んだかは思い出せない。そんなに面白い本ではなかったかもしれない。でも、これは驢馬の「殺されたメロディー」通称「支配者」になんとなく当てはまるように思った。これをキャッチフレーズとしてメンバーに提案してみよう。

 水道管破裂箇所を懸命にバナナで抑えていたおれは実際には状況対処としてやっていたわけではないように思う。
 ただ、水があんまり勢いよく溢れ出るから思う存分水を浴びたかっただけだろう。
 元栓がしまり店内のすべての水道が使えなくなった今、おれは床に這いつくばったり冷蔵庫の裏の汚れを全身で浴びたので、真っ黒になっていて、それを洗うためには傘をささずに外に出て空を仰ぎ見ればよかった。

 配水管なんかが破裂しなくても台風の日には水浴びはできるのに。

それでもドストエフスキーを読まなかったら不良少年はこうはならなかった。


 そしておれは不良少年でさえなかった。じゃあなんでこんなことになったんだ?
 かつても今も、ただ不明のなかにいて、不明の旅に出かける。

 ドストエフスキーは「地下室の手記」が一番好きだ。ちゃんと読んだのはあれだけかもしれない。
カラマーゾフの兄弟には悪いが。


このビデオを観てくれよ。

https://youtu.be/6AVmY6z3Q94



(実際のキャッチフレーズとは異なります。このキャッチフレーズは採用されませんでした。)



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2015年8月28日 (金)

なかなかのスピード狂です。

なかなかのスピード狂です。
私の時間は0:55.88ですらるは




 朝起きたらそういうメモがデータに残されていた。
スマートフォンのアプリケーションの中で一番使うのは象さんマークのEvernoteだ。このblogの文章だったり、歌詞だったり、思い付いたときのメモだったり、そういうことに使っている。
けれど上の文章を書いた覚えは無かった。眠る前に何かしたのだろうか?


 昨晩、社長と馨子と3人で今後のリリースについて話し合った。
zampanoが8月に活動を小休止せざるをえなくなる前から、カセットテープリリースの話があったのだが、大幅なレコーディングの遅延のため、いろいろな仕切り直しをしなければならない、という話だった。
もうレコーディングは終えているが、曲目の大幅な改訂のため、もう少し発表は後になりそうである。


 話し合いの途中でおれのスマートフォンを見ると時間がまた一時間進んでいて、サハ共和国ヤクーツクのGMT+10:00時刻を指していた。それを見たふたりに、
「またそうやってわざと変なことをやって!」と言われた。


たしかに奇をてらったり、わざと変なことをやったりはする自分だけれど、真剣にミーティングしているときにわざと変なことをしたりはしない。


 だけどそんな時に「トルク」という頑丈さだけが取り柄の、少し頭の弱いスマートフォンは別の時間軸を表示したり、謎のメッセージを表示したりする。AIが搭載されているのか?そのうち宇宙船ハルのように話し出すのかもしれない。


別の時間世界から誰かがおれをみているのかもしれない。

そう思うと少し心が安らぐのは確かに変な奴だと思う。



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2015年8月26日 (水)

セッコは飲まずにパーティーの準備

 月曜日はHip-Hopのレコーディングがあって、レコーディングというかミックスだったんだけど、水面下で動いていたグループの音源を三曲、9月に発表できそうだ。
 そのグループのメンバーのひとりがポポラマーマが好きで打ち合わせがてらよく飯食いにいくのだが、ポポラマーマのメニューを観ていて目を見張った。

 白ワインにフラスカティー・セッコがある。しかもめちゃめちゃ安い。

他にもモンティ・パガーノとかランブルスコとかがあって、ああ、ここはモンテ物産から仕入れてるなとわかった。

長くイタリアンで働いてるとこういうことを言い出すからやだな。イタリアンレストランでは定番の仕入れ先のひとつなんだよ。

フラスカティー・セッコは白ワインの辛口のやつで、ラツィオ州のローマ近郊で作られるワインだ。断じて今ググって調べたりはしていないぜ?
安いし、おれみたいな辛口以外はどうでもいい世界の人には非常にいい感じのワインである。

 ていうかポポラマーマは赤ワインのグラスがネロ・ダーヴォラだった。ネロ・ダーヴォラはシチリアでたくさん作られる葡萄品種で、まあ、シチリアというだけで贔屓目にみてしまうよね。ゴッドファーザーⅡ的にはね。しかもシチリアなだけあってやはり辛口かつチェリーなチョコーな感じなんだよ。しかもポポラマーマはグラスワインもめちゃめちゃ安かった。これは今度何かのときにポポラマーマに来てたくさん飲もう!と思った。
 この日はちょっとしか寝てなくて(前の晩に2時頃まで飲んでたせいだが)、朝イチで起きてずっとミックスやってて、この後はライブを観に行ったあと音楽サイトのインタビューを受けるので昼間から不用意に酔っぱらうと危険だと判断するところが大人だ。だろ?

 一滴も飲まないでファミレスで話しているとヒップホプの目標について話し合った。
ひとりのメンバーは「ブリンブリンがしたい」と言った。
 おれは思わず「ブリンブリンてどっちの意味?」と聞いてしまった。彼は純粋なこどものようなラッパーなので(ツアー前にスケボーで捻挫するようなタイプだ)、
「車とかほしいなあ」と言った。おれも彼が車を買ったらきっとおれを乗せてどこまでも連れていってくれて便利に違いないと思ったので「それはいい」と賛成しといた。

 もう一人のメンバーは「誰かをディスりたい」と言ったので耳を疑った。
「そんな乱暴狼藉をしてはいけないよ」と僕は言った。そうすると彼は
「おかしい!おまえは昔、友達をディスるラップをレコーディングした後わざわざそいつの家のポストに投函して、絶交されたりした!それでも懲りずにまた誰かをディスったり悪行三昧、罵詈雑言の数々。繰り返される諸行無常よみがえる性的衝動!」
と眥をNIKEに吊り上げて怒り始めた。まなじりって言いたかったんだけど変換で「眥」って出てきて焦った。
 争い事はよくないなあと思いながらもじゃあ誰をディスるの?と聞くと「それはライブハウスでふわふわラップしているようなやつだ!」と言う。
おれはライブハウスでラップしているようなやつを思い浮かべたが驢馬というバンドとかチムニィというバンドとかしか思い出せなかった。大坪さんや木下さんをディスるのはとても気が引けるし恐ろしいなあと言うと「それはやらない」と言うのだった。じゃあ誰をディスるんだ???誰かライブハウスでラップをしている人を教えてください。

 おれのヒップホプドリーミンはなんだろな?と考えると

∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨
≫≫≫パーティーがやりたい!!≪≪≪≪
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というドリーミンに尽きる。
とりあえずそのときの話し合いでワナビーの二人にも説明してやったんだが、さらに、おれのパーティーのイメージは明確化してきたので、それを説明するぜ!!!
 
 まず、パーティーの内容なんだが、おれたちのライブとか対バンはないんだよ。誰かDJとかがいて勝手に音楽をかけてくれていたらいい。それで雰囲気が重要なんだが、女性は沢山いなくてもいいので、ピンポイントで美人がキリッと佇んでいてほしい。例えば3㎡に一人くらいの美人含有率でいい。
 あとは何をやっているのかわからない怪しい人たちが沢山集まっているのがいい。そのとき何をやっているのかわからないし、ふだんも何をしているのかわからないくらいの人がいいのだ。

「ハンターズラン」で出てくる植民惑星サンパウロでラモン・エスペホがエウロパ人を殺したバーとか、「重力が衰えるとき」で性転換娼婦がたむろしているブーダイーンのディスコみたいな雰囲気がいい。
 そこのパーティーで誰が誰だかわからない状況でアルコール度数がへべれけに高い化学合成酒をショットしながら、ドン・ガバチョのビートメイクしたヒップホプが流れたときに、傍らにいるストレートの女性に「この曲はおれが作ったんだよ」と言えればおれはそれでよかったんだ。ヒップホプ作りたい理由はそれだけだよ。

 それを聞いた他の二人は爆発的なアキレガオの後、「好きにしてください」と言った。

どうしたら、そういうパーティーができるだろうか。最近地元で見つけた「ONE LOVE」というレゲエバーは、レゲエバーとは言えど、ガランドウのコンクリートうちぱなしスペースにドラム缶や鉄格子があってあからさまに手作りのDJブースとDQNが好みそうなダーツしかないという、それにしては広いスペースにレゲエではなくフライング・ロータスとかロウエンドセオリー系のヒップホプがかかるいなたいスペースだった。ここならばサンパウロやブーダイーンの怪しげクラブの雰囲気は出せそうだ。
 そこにこないだ立川で知り合ったアフロアメリカンのラッパーたちを呼べればかなり怪しげだろう。黄金狂時代のユーミくんもヒップホプが好きだと言っていたし普段なにやっているか謎な雰囲気を醸しているので呼びたい。印南さんも普段から蕎麦か赤ワインというイルマティックスタイルなので招待しよう。顔がイスラムぽいDJT.A.G.S も呼ぼう。ここまで書いて気づいたが全然女性がいないのだった。性転換女性すらいない。

 しかし他の二人はひばりヶ丘だと集客ができない、と言うのだった。だからおれはこれから会う人会う人にヒップホプのCDを渡してパーティーの準備をしていこうと思うんだ。来てくれるよな!



 こんなことを長々書いてきたが、上記のヒップホプと関係ない驢馬のセカンドアルバムが9/16にリリースされます。それに伴い長らく休眠していた驢馬のアメーバブログが再開されました。
なんと!交換日記形式で5人で書いていくという今の時代には見なくなったような?こいつら!?仲良しなのか?!?!というリレースタイルでお送りする第一回は三代目エレキギターのjoseさんからです。ちぇけらっちょー


http://amba.to/1JtIK9D



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2015年8月15日 (土)

ヤドク蛙の腕時計

 スーツを売っている巨大店舗でネクタイを探していたが、好みに合うものがないので店を出ることにした。ミッキーとふたりで歩いている。場所は繁華街だ。
 
 ふとリサイクルショップを見るとDQNの人が好みそうなシルバーアクセサリーがあった。「非常にヤンクなアクセサリーがあるな」とミッキーに言うと寄っていくことになった。おれの心のなかのミッキーは一匹狼のヤンキーなんだ。武装戦線みたいに。

 棚を物色しているとブリンブリンなアクセサリーに並んで、琥珀色の腕時計があった。前々から腕時計が欲しかったおれは手にとって着けてみた。

「おい見てみろよミッキー。この時計よくないか?」

「へー。変な素材だね。何でできてるんだ?」

「ん?タグに何か書いてある。『ヤドク蛙の腕時計』だって。バンドの部分はヤドク蛙の背の皮をなめして蜜蝋でワックスしました」

「ヤドク蛙ってこんな色じゃなくねー?」

 確かに知ってる限りヤドク蛙の色ではない。時計は斑がかった深いグラデーションをもった琥珀色で、鼈甲を思わせる。質感はマットで、それでいて文字盤と秒針は金色の光沢ある作りだった。

 秒針、そう秒針があるのだ。

 腕時計に秒針があるのは嫌だった。ミュージシャンはBPMという1分を任意の数字で分割するタイムに従って行動している。1秒というのはBPM=60ということになる。テンポ60というのはおれたちの感覚でいうとちょっと遅いんだ。

「秒針がなかったらよかったのに」

「なあ、この秒針、シームレスにヌメヌメ動いたり、カチカチ動いたり変だぞ」

 秒針は12時から4時までは滑らかにシームレスに動くがその後はプルプル震えて止まる。カヂッッ。…カチカチッ。とても1秒を刻んでいるとは思えないぎこちない動きで9時まで進み、思い出したようにまたヌメヌメと動いていった。ゼンマイ仕掛けのナメクジだ。

「本当だ。変な秒針。それに変な時計。¥12,510だって。4000円なら買うんだけどな。」

 乱雑な棚の奥にひっそり隠れてこちらを窺っている店員を呼んだ。東南アジア系の男だ。ジャマラディーン・プッサムという名前だった。プッサムは呼び出されると、ヤドク蛙時計の秒針と似た足取りで、終始ぎこちない挙動不審な歩みでこちらにやってきた。

「はい、なんでしょか?」

「この時計の秒針はなんで歪な動きをしてるんですか?」

ミッキーは顔は笑っているが目がNIKEの状態の「なんぴとたりともおれを騙せやしねえ」という対外的基本姿勢を一切崩さずにプッサムに質問した。

「ヤドク蛙の時計デスネ。ヤドク蛙の筋肉に電流を流すーとピクピク震わせるとちょどグリニッジ標準時刻と同期するヨ。東京はGMT+9だからちょとズレあるね。そのため誤差を修正したりサボたりするイケナイ?!ヤドク蛙!」

 プッサムの話し方はおれの知る限りでは荻窪の台湾料理屋「瑞鳳」の店主と同じしゃべり方だった。「瑞鳳」といえば「うちのラーメン覚醒剤入りよ!麻薬!麻薬ラーメン!!」で有名なあの名店である。

「つまりこの時計はヤドク蛙の筋組織がムーブメントに組み込まれているのか?!うへえ」

「いいんだ、ミッキー。おれのスマホはGMT+10のサハ共和国ヤクーツク時刻を勝手に表示して困っていたのだ。ヤドク蛙の方がよっぽどいい。プッサムさん、この時計を売ってください。3000円で。」

「お客さん!わたしのことナメテるダヨ!!」

 そこから押し問答が始まって、値切った結果4000円でヤドク蛙の腕時計を購入することになった。

プッサムは「ではこの書類に住所と名前を書いてくだサイ。年齢性別も。」という。

 書き終えると

「では、その上にあなたの部屋から見た窓の景色を書いてくだサイ。」と言う。

「ボールペンでですか?どのくらいのサイズで?」

「住所の上に被って描いていただいて構いまセン」

「はあ」

 自分の部屋の窓から見た景色を思い出して描く作業は存外に難しいものだった。出来上がった絵を見たプッサムは

「何ですか?!?!これは?」

と大声を出した。

「ですから自分の家の部屋の窓から見た景色です。」

「下手くそが!この隣の線は?!」

「ビルです」

「奥に見えるゴミくずはいったいなんなんデスカ??!!」

「あれは新宿です。自分の家の部屋の窓からは新宿はとても見えないのですが、夜窓辺にいると遠くの赤い光が新宿の光のような気がするものです」

「それならよろしい」
とプッサムは突然の納得了承を示した。

「この窓の絵であなたがあなただと言うことが証明されました。今後どんなことがあってもこの絵を示せばあなたがあなただと誰もがたちどころにわかるでしょう」

 やっとのことでヤドク蛙の腕時計を手に入れたおれだったが、とにもかくにも一刻も早くこの店を出たかった。

 店を出ようとすると入り口近くのテーブルでバーテンのOとNANAさん、O澤さんが三人でケータリングを食べている。
Oは少食のはずなのにエビフライを三本ものせた特盛お子さまランチを食っていた。

「食いきれないんだ、ちょっと待ってくれないか」

「ならそのエビフライを一本くれ」


 渋い顔のOからエビフライをもらって食べようとしたら目が醒めた。

夢だったのだ。

おれの手にはヤドク蛙の腕時計は無かった。

夢でもいいからあの時計がほしい。



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2015年8月12日 (水)

操り人形売りと泳いだ夏の午後に

 時間労働が早く終わる。シフト希望では通しの勤務予定だったのだが、閑散期ということもあり、人員削減のために午後三時で上がりになってしまった。

 こうなることを予想していたので、上がったあと市民プールに行った。市民プールは夏の期間は屋外プールを解放している。それに理由はわからないが、いつもの入場料の半額の200円で入れるんだ。

 屋外プールはガキどもで大にぎわいだが、奥のほうの深いプールのノンストップレーンはガキもおらず比較的空いているのでおすすめである。

そこで一時間ほど泳いだ。

 驢馬のセカンドアルバムジャケット撮影のときに水中撮影に慣れるため、プールに通っていたが、泳ぐのはそれ以来だった。最近はジムにも行ってなかった。でもそういった体を鍛える理由ではなく、屋外プールが単に気持ちいいからプールに通いたくなった。

 泳いでいるうちに夕暮れに傾斜していく日差しのグラデーションが見れる。
息継ぎの度に水面から顔を出した瞬間、蝉の鳴き声が飛び込んでくる。水面に沈んだ瞬間水と空気の泡の音で蝉が一気にミュートされる。

 あと、一時間に一度、10分間の休憩の合図で一斉にプールから上がらなければいけないのも面白い。強制終了なんだ。これは社会のいたるところで採用すべきシステムだと思う。街やオフィスでも笛がぴーっ!と鳴ったら10分間なにもしてはいけないというルール。
 
 休憩中はぼんやり座っているだけだった。おれは目が悪いから、プールで裸眼ではほとんどなにも見えないんだ。

休憩のあと15分ほど泳いで上がった。着替えていると知った顔があった。
思い出野郎Aチームのパーカッション、松下源だ。彼も泳ぎに来ていたのだった。奇遇なことよ。

 源ちゃんは大学一年生の時にミュージシャンになる前からの友だちで、とにかくむちゃくちゃで、だけどのんびりな野郎なんだが、最近仕事をやめてプールに通っていたらしい。聞けばたまに露店商として井の頭公園で操り人形を売っているそうだ。

「それ売れるの?」

「一時間で一万は稼げるよ。」

「仕入れ値は幾らくらいなんだい?」

「100円。」

「ふーん」

そういえばチムニィのユーテツさんも井の頭公園で詩集を売ってた。詩集と操り人形はどちらの方が売れるのだろうか?

源ちゃんは脳みそがかなりラテンアメリカ的なんだが、やはりそういう人はパーカッションに向いているのかもしれない。

 ふたりでチャリに2ケツして三鷹駅に飲みに行った。お互いに近況を話し合う。おれは源がミュージシャンになるとは思っていなかった。色んな才能にあふれているし、無闇に景気のいい運勢の持ち主だからな。もっと他の商売で大成すると思っていた。でもよく考えたらこいつはプールに通う操り人形売りなのだからおれの予感もあながち間違いではない。

 夏だし、パーカッションとなにかやりたい。源ちゃんとレコーディングしたいなーと提案するとやろうやろう!と快諾してくれた。楽しみだ。

 バサラという飲み屋に行った。ここの大将はチムニィのディスクレビューを書いていたことで知っていた。おれも源ちゃんもチムニィが大好きだから大将と話せて光栄だったし、イカのワタ焼きは最高に旨いし、プールのあとで気分はいいし、焼酎はうまかった。



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2015年7月28日 (火)

驢馬の遠足



 驢馬が遠足に行った。メンバーは驢馬の壺、壱くん、カツヤさん、ホセ、NG、それにカメラマン/芸人/小説家の松本時代くん、スタイリストの清水くんの7人の侍。

 驢馬フェスを終えて慰労の意味(?)もあるのかな?多分、いや、絶対ない(笑)。驢馬はきっとなにか別の目的で出かけたにちがいない。それでもおれはカツヤさんと話した。「まるで夏休みみたいだね」」そんな素敵な遠足であった。

 渋谷に朝集合して、一路、西東京へ。

 二時間ほどかけて奥多摩へ。日原鍾乳洞に着いた。日原鍾乳洞というか、鍾乳洞自体初めて来たんだよ。初鍾乳洞。この日は無茶クソに暑かったのだが、まず鍾乳洞の入り口の沢に降りた時点で涼しかった。
そして鍾乳洞の中はもはや冷たいと言ってもいいような冷えようであった。びっくりした。そして洞内の冷えきった天井の鍾乳石からヒヤッッ!!!とした水滴が不意に首筋に瞬間的に垂れてきたり、足元もびちゃびちゃに濡れはべっていて。

「君。ほら。危ないから手を貸してごらん。拙者がエスコートせねばこの地獄洞の三途の川は渡れぬでござろう。ここからはけして手を離しなさるな。」

「あっ!見て見て!三途の川の賽の川原の隣に縁結びの祠がある!えー?!お参りしてこうよおうー?!」

 とかイチャイチャするカップルの横に驢馬メンバー5人全員が鍾乳洞内を歩き回る様。さらには時代くん、清水くんという一癖二癖、三癖、四癖!もある男衆がぞろぞろ賽の川原の横の縁結びの神様に祈るでもなく無言で歩いているのだからこりゃまたアベックの皆さまには悪いことをしたような気もする。
鍾乳洞に訪れる観光客は意外とカップルa.k.a.アベックが多かった。若いアベックからお年をめしたベテランアベックまでバラエティーに富んでいた。

 確かに鍾乳洞内は滑りやすく、感受性豊かな人であれば暗闇は怖いし、加えてなぜだかライブハウスの照明のような赤色と青色を強調しすぎたLED灯が刻一刻と色を変化させつつ洞内を照らしていた。案外デートスポットとしては優秀な場所かもしれない。吊り橋効果(by チムニィ)も容易く狙えるかもしれない。(いまはそれは無いですね。)

 老アベック、若アベックのデートの邪魔をしまくりつつも驢馬は鍾乳洞内で目的を果たしたので次の目的地に向かった。次の目的地は廃ロープウェイである。

 君は廃ロープウェイというものを知っているか?おれは知らなかったぜ。廃ロープウェイというものがこの世にはあるんだよ。素敵だよな。初めて訪れた。

 奥多摩には何十年も前に廃線になったロープウェイがあって、そのロープウェイおよび発着駅が撤去されることもなく廃墟になっているんだ。

おれたちはそこを目指して奥多摩の湖をぐるッと一周した。
廃ロープウェイの近くのはずの場所まで来たのだけれどどうにも近づけない。
湖を回る道沿いの民家のそばを歩くお婆さんに声をかけた。
 おれには時代くんがおバアさんと話す会話はまるで聞こえなかった。
ただ、その会話を見守るように縁側に座るガキどもが洟をたらしながらおれたちのことを見ていた。
 つげ義春の漫画で、家族で都下の山村を訪れる話を知っているかい?山の飲食店のババアが縁側にいる赤ん坊の漏らしたうんこを摘まんで捨ててその指を洗わないで蕎麦をつくる話だ。おれは咄嗟にあの漫画の場面を思い出してしまった。

 おバアさんが言うにはここから5分引き返した場所にロープウェイの駅があるという。どうやらおれたちは通りすぎてしまっていたようなんだ。戻っているうちに壱くんが「アレじゃない?」と赤錆びた送電鉄塔と言うには背が低すぎる、頑丈そうな構造物を発見した。確かに。アレみたいだな。

 ロープウェイぽい赤錆びた構造物の下の辺りには古びた観光客向けの食堂がいくつか並んでいた。もともとロープウェイの駅があったとしたらその周りに土産物屋や食堂があったとしても不思議はない。おれたちは何とはなしの確信を得るとともに、朝からなにも食っていなかったし、とにかく飯を食いたかった。

 食堂のそばの永遠に突っ立っているかのような赤銅色の肌をしてヘルメットをかぶったジジイが「ここの店は今日お休みだよ」と教えてくれた。向かいの店は?と聞くと「知らないが店に入っていったお客さんはすぐに外に出てきた。多分やってないよ。」

 壺a.k.a. 腹ペコジャジーラの落胆は絵に描けるようであった。おれはいつか驢馬が有名になったら腹ペコジャジーラという絵本を書きたいと思ふ。
 
 おれたちは目当ての建造物の周りをぐるッと一周した。まるでロープウェイに行くような道は何一つ見当たらなかった。

 スマートフォンカマボコ板で調べると、ここのロープウェイ駅を過ぎてしまうと遥かに引き返した場所を目指さねばならない。なんとかこの場所で廃ロープウェイ駅にたどり着けぬものか。おれたちはそう思ってもう一周した。


 そう思ってもう一周すると、一周目には見過ごしていた破れ寺の無人墓地があった。墓場というものは古来から集落より一段上がった高台に作られる。祖先の霊魂が合体集合した氏神様が人々の暮らす村落をよく見渡せるためである。と学生のときとっていた民俗学の授業で教わった。なぜ、あのときアホ面で半分寝ていたのか。民俗学の授業に出るのがメンドくさくて結局仲のいいアル中の荒木くんにプリントを借りて試験に臨んだことを思い出す。アル中荒木は元気だろうか。


 無人墓地の入り口は閉ざされていたものの、閂の上に「害獣立ち入り防止のため」と書かれている。害獣?なにを。驢馬と言えば益獣の代表格ではないか?!と言いながら我々驢馬は躊躇なく閂を外した。
墓場の階段をスマヌスマヌと口には出さずとも心の片隅のかなり脇のほうで呟きつつも上を目指していくと、あった!アレじゃないか??鉄柵の網を乗り越えた先にあった。廃線となったかつてのロープウェイの駅である。

 おれは金網乗り越えて先に偵察に行った。建物の脇の階段をのぼる。屋上にはなにもなかった。中に入る。

建物を回るとガランドウの暗闇がぽっかり口を開けていた。これは。と思った。
ああ、なにかいるな。3人くらいいる。こちらを窺っているようだ。向こうより多い人数で行った方がいいだろうと咄嗟に判断して、メンバーを呼んだ。

仲間と供に入ったときには暗闇の気配は希薄になった。

 暗闇の中は巨大な歯車のある動力室だった。黴と堆積した埃が舞い上がる焦げたような臭いがして涼しい。部屋を一つずつ覗いていった。打ち捨てられた椅子。錆びたストーブ。割れて額縁だけになっている鏡。鏡が無くて安心した。ある部屋で蝙蝠が飛んできておれたちを驚かせた。それでホッとした。危害を加えるような何かはここにはいなそうだ。

ダンジョンのような構造を探険していると視界が開けて、そこに古びたロープウェイの筐体がぶら下がっていた。ロープウェイの発着場だ。ロープウェイの先は伸び放題の竹林。その向こうに連なる山々と湖を見渡すことができた。




(作者急逝のため中途で絶筆)
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 と、ここまで書いていたんだが、そのまま放置して一週間経ってしまった。このあとの続きが書けなくなってしまったので
果たして驢馬は遠足から帰ってこれたのか?!(帰ってきている)
遠足の本当の目的とは?!その時、時代君の発した言葉とは?!

特に続きは無いが想像して楽しんでください。



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2015年7月19日 (日)

祭囃子が聞こえない

 驢馬フェスの翌日の土曜日は休みにしておいたのだが、どういう風にして家まで帰りついたか覚えていない。朦朧とした心理でシャワーを浴びた後はベッドに倒れて泥のように眠った。

 目を醒ましたらもう夕方であった。特に何をするというなんの予定もない。最近誘っている女性とはニアミスしてばかりで今日もなんの連絡もなかった。これはまた今回もダメかもしれない。

 駅の方に自転車を置きっぱなしにしていることに気がついて、なんとなく家を出た。ベラボウに腹が減っていたからコンビニまでとりあえず行こうと思って歩いたが、雨が降ってきてとってもメンドクサクなってしまった。庇のあるバス停のベンチに座ってしばらくぼんやりした。

 こういうとき、どうしたらいいのだろうか。誰かに会いたい気もするが、全然誰ともなにも話したくない気もする。ぼんやりしていたら雨は上がった。

 そう言えば近所のイチョウ公園で納涼盆踊り祭りがやっているなと思い出した。屋台でなにか食えばいいかもしれない。そっちに行ってみよう。

 会場に近づくと祭囃子が聴こえてきた。まったく見たことも聞いたこともないアニメキャラクターの新作音頭である。

 日本人はいったいいくつ新作音頭を作れば気がすむのだろうか?アラレちゃん音頭あたりで止めておけばいいのに。こうして懐かしさの欠片もないスタンダードなき世界の夜祭りが催され、世代間の交流なきまま引き裂かれた状態で人間たちは過ごすのだ。おれたちは共有不可能な平行世界でお互いに生きている。

 盆踊り会場は踊る浴衣姿も疎らであった。まだ雨もパラついている。近所の中学生や小学生のガキがたくさん集まっていた。おれもかつてはこういうガキのひとりで祭で屋台とか出ていると異常に興奮したものだ。なにに興奮していたのだろうか?
夏の恋が始まる予感だろうか?実際に夏祭りの夜店で恋が始まったことなどなかった。ヤンキーの数はおれがガキの時分よりもだいぶ少ないように見えた。彼らは一体どこにいったのだろうか?おれだけ変わらぬ風体でフラフラしている。

 こういう場所に来ると、かつての同級生が若妻のママなんかになって子連れで来てるかもしれないな、そんな若妻と視線だけの邂逅を交わしてお互いハッ!とするかもしれない…なんて思ったがそんな偶然の運命的出会いもなかった。漫画とか映画ではないのだ。それにおれの年齢はそういうことが起こるには中途半端なのかもしれない。

 そんな自分の思考発想力の変わらぬ貧しさ乏しさに飽きれ果て、屋台を物色してたこ焼きを買うことにした。
500円もしたからなのか、コーンとうずらの卵が入っていて、それがまた全然旨くなかった。マズイのは一向に構わないのだが、コーンもうずらの卵も要らないから300円くらいにしてほしい。

 どうしようもない気分で祭を離れて歩いた。ガキどもも大人もスマホでjpgデータを撮影し保存している。おれがガキの頃はスマホとかいうカマボコ板をさすったりかざしたりする儀式が無かったので祭を写真データに納めなくてもよかったし、おかげでそういう習慣も身につくこともなく、夏の夜に液晶を覗きこむ野暮をしないですんだ。かつての時代にありがとうと言いたい。

 おれは結局マズイたこ焼きを食っただけだった。もっと旨いものを食いたい気分だったが、どうでもよくなってしまったのだ。

 帰り道を歩いていると見たことの無い新しい道路を見つけた。全然人の気配が無く、街灯が白っぽい変な色で夜を照らしている。
 そういえばガキの頃から祭の日、人々が集まっている場所よりそれで人の気配が薄くなった他の場所の暗闇でのんびりしているのが好きだったことを思い出した。変なガキだった。全く変わっていないが。

 この新しい道路は全く人気が無いし、遠くの祭囃子すら聞こえない。

 そういう場所にいたい、という気分をどう説明したら、なんと形容したらいいのだろうか。

 昨晩は自分のバンドのフェスなど開催して集客に一喜一憂していたくせに人気のない暗闇が好きだとはどういう了見だろう?

 ただおれの音楽はどうしてもそういう人の気配のない暗闇から始まった音楽であり、それはなにもおれだけではないのだ。

 そうじゃない音楽を楽しみたいやつは見たことも聞いたこともないアニメキャラクターの新作音頭を聞きながらあんず飴でもナメてやがれ。老人たちは見たことも聞いたこともない新作音頭でも盆踊りを踊ることができる。音頭というのはまったく凄いフォーマットだよ。

 おれは祭囃子が聞こえないくらい離れた場所で新しい道路のLED街灯に照らされた暗闇をひとりで歩いた。

おい、この道はどこに続いているんだ?



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