2016年12月 9日 (金)

木曜日の深夜から

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朝の五時だ。今さっき驢馬の深夜練習が終わった。

12月の朝、東京でももうそろろ寒くなってきて冬の朝って感じがするよ。


おれたちは五年間、毎週毎週木曜日の深夜にスタジオに入っていた。


最初は池ノ上だったな。あのスタジオはよく覚えているよ。駅からスタジオの坂道が長いんだ。


 朝陽が徹夜のバンドマンのショボくれ眼を眩しく照らす中で、
長い坂道を楽器背負って歩きながら全然意味のない会話をして歩いたこともあったよ。

 驢馬始めたばっかりのころ、あの駅までの坂道でハカランダおじさんに出会った。

おじさんは「おまえはどんなギターを使っているんだ?」と言うから「ガットギターです」と答えたら「わたしの家の庭にはハカランダの樹が植わっているんだ、観ていきなさい」と言って豪奢な家の塀越しに庭に植わっている樹を見せられたっけ。


 壺にゃんは絶対興味ないはずなのに、多分眠すぎてぼんやり樹を眺めているし、

カツヤさんはこの世のことをあの世くらい面白がって観てるからハカランダおじさんの会話に驚きと感動をもって答えていた。

おれはというとハカランダがなんのことかわからなかったな。

壱さんはもちろん既に帰っていたし、

joseはあのときどうしていたんだろう。覚えていない。


おじさんはちょっと狂っていて、あの豪華な家はおじさんの家じゃなかったのかもしれないし、

今となってはハカランダおじさんにあったことも夢だったのかもしれない。

ぼんやりとしか思い出せないな。でも、奇妙なムードに満ちた朝でこんな気持ちになったことは覚えてるし事実なんだ。
 
 
 
    §§§
 
 
 
 悪いけど、このblogには驢馬が解散する理由は出てこないよ。ただ今、どんな感じか伝えたかったんだ。
あと、今、書くことがあるような感じがした。またしばらく間が空いちまったもんな。連絡しないですまなかったよ。
 
 
 
     §
 
 
 

 三年目くらいから池ノ上の長い坂を歩くのをやめて、吉祥寺のスタジオに入るようになったよ。
吉祥寺のスタジオは駅から近くて助かった。
あと、スタジオの店員がいつもワイワイしてて会話が楽しかったな。
あんまりメンバーの会話が無かったときもうまい具合にホッとさせてくれたよ。
こういうことって、些細だけど大事だよな。


 そんでも朝、やっぱり一人になって帰るとき、なんかすごい気持ちになるのさ。

驢馬の解散が決まってから、木曜日の深夜練習をやっていなかった。今日は久しぶりに入ったんだ。だから思い出したよ。


 冬の朝に投げ出されて、始発のこれから出かける人たちに交じって楽器を担いで帰る。


 なんか、感じることがあるよ。過去にもこのタイミングで書いたことたくさんあるよ。


 おれたちの音楽はこういう静かな朝と一緒に育まれていった。

誰もいない商店街とか、車の来ない横断歩道でカチカチ点滅している信号なんかを観て思い出したんだ。

 例えば、旅に行くだろ。旅先でバンドで演奏して、夜中の打ち上げに少し顔を出して、日付が変わる頃に次の街に出発する。

田舎ではそんな時間に人間がいることは稀さ。誰もいない交差点や、自動販売機が佇んでいる世界を通りすぎながら行く。

 無人の夜の情景がイマジネーションをたくさん生んだよ。だからみんなで行くバンドの旅がすげえ好きだったのさ。


 今朝、今さら気づいたが、東京でもおれたちが朝まで練習やって、午前五時頃帰るときの誰もいない雰囲気は旅と同じくらいイマジナティブでよかったんだ。

あんまりわかっていなかったな。

全然普通の、繰り返し繰り返してる朝がインスピレーションと力をくれた。そうやって驢馬は育っていったんだと思った。
 
 

あと二回で驢馬は終わる。

 
五人の男が五年間ツラ突き合わせて、夜と朝の間に作った音楽だ。

最高の演奏で届けようと思っている。
 

五人が全員そう思っているよ。


 
 
 

 
 


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2016年11月13日 (日)

world traveler

instagramってやってるかい?

おれはどのSNSやったって頻繁に更新したりいきなりパッタリやめたりして、学ばない野郎だ。

 おれの挙げる写真は演奏旅行中の写真が多い。非日常めいてるときの写真ばっかさ。ニュースサイトをだらだら観てたらinstagramの嫌われるユーザーの例でworld travelerというタイプが出ていた。world travelerはリゾートバカンスや世界の名所の写真ばかりinstagramに投稿して、日常の自分の写真は全然あげねえんだと。instagramの使い方わかってねえ、寒いやつだって嫌われるらしいぜ。

 おれのinstagram がツアー中の写真ばっかりなのは正にworld travelerじゃねえかって思って落胆したよ。

 もっとマシな奴でいてえなって思って、最近撮った写真探してみてたらさ、データにあるのはレコーディング中の写真とか、バイト先で撮影した本日のパスタとか、ネット上に晒しちゃいけねえようなデータばかりでツマンネエ毎日送ってやがんなと思った。

 とりあえず二枚だけ久しぶりにあげてみたよ。職場とか左右田さんには黙っててくれよな。内緒だよ。

あげ茄子のトマトソース

ngbarbaroiさん(@n.g.barbaroi)が投稿した写真 -

2016 11月 12 6:14午前 PST

 でさ、instagram観てたら、昔の知り合いが「知り合いかも?」みてえな機能でユーザーアカウント表示されたんだ。

あれってすげえよけいな機能だと思わないか?

 確かに友達さ。でも人間を何年かやってるともう二度と会いたくないような友達もできるんだぜ。極左の前衛美術家とかさ。

 あの余計なお節介機能で「友達かも?」って昔のおれのバンド仲間が表示された。アカウント名がアフリカの議長と無政府主義を併せた悪意ある名前だから間違いないさ。誰のことだかわかったやつもいると思う。本人には言うなよ。

 そのアフリカ無政府主義者とは仲違いした訳じゃねえんだけど、あいつが別のおれの地元の親友と大喧嘩しちまったから、なんとなくおれも疎遠になっていた。

 風の噂では、子どもが生まれたって聞いてた。

 あいつに子どもが!って思ったよ。

 だってなあ、あいつはブコウスキーどころかバロウズまで全部読んでるようなやつだ。クレイジーと思わないか?

おれたちの中のいったい何人がバロウズを頭からケツまでバロウズを読みきったんだい?おれもバロウズ持ってるけど全部読みきったことがあるのは裸のランチだけだよ。あれはとっても大変な体験だった。 

 テクノのジェフミルズだったりセオパリッシュとかさ、フリージャズってかサン・ラが好きで、クリストやデュシャンやダダイズムの美術を愛してるやつだった。一緒に美術館に行ったり、レコードを掘りに行ったりしたよ。

 とにかく超先鋭的な感覚の持ち主なんだ。

 最後の頃はムーンドッグのレコードをかけながら「もうNGにはわかんないかもしれないな」って言われたこともあったな。あのムーンドッグのアナログ買ったよ。ムーンドッグな、やばいよな。

 中学生の頃からあいつとはつるんでて一緒に遊んでたけど、おれらが遊んでた最後のころは、お互いの家に行って、買ったきたレコードを二人で聴いたりしてただけだった。

 とにかくバンドやめてからのあいつはヴィンテージ機材の要塞を築いて宇宙のようなトラックを作ってたよ。あいつの書く文章も絵も素晴らしかった。昭和の漫画と現代美術がそのまま融合した画風だったさ。

恐ろしいレコードと、本のコレクションを持っていた。とにかくおれにとっては先生だったのさ。

 あいつが子どもが産まれたって噂で聞いて、きっと音楽を辞めちまうんじゃないかって思ってた。

 だってさ、あのコレクションと要塞を維持するのはむちゃくちゃ大変で、言っちゃえばバンドやるより大変な話だからな。勝手な想像だけど、また音楽を創ってる友達が一人減ったんじゃないかって、哀しんでたんだよ。

 

 だけど違った。

ネット上で再会したあいつのinstagramに出てきたギャラリーには、相変わらずの惚れ惚れする音楽の要塞の画像が沢山あったんだ。音楽辞めたと思ったのは、まったくおれの自分勝手な思い込みだったんだ。

MPC60、TR707、MS10、nordの鍵盤、mackeyのミキサー、二人で曳舟のヤク中から買い取りに行ったKP2、音のぶっといRODECのテクノミキサー。それだけじゃない。ミキサーの前にはフェーダーを弄る小さな子どもの写真があったんだ。

わかるかい?おれはブッ飛んだ。

感動したんだ。あいつの子どもがミキサーと一緒に映ってやがる!!

 おれはてっきり家庭を持ったり、子どもが生まれたら、音楽を手放さなきゃならないと思ってたんだ。普通の人間にならなくちゃいけないってさ。

 バンドやっても粋がってるだけでリアリティーねえ感覚の持ち主なんだよ。音楽を手放せるのか?いったいどうやって?

おれたちが、何があってもどこかに戻れるわけなんかないんだ。進むだけさ、

 アフリカの無政府主義者は狂ってる。あいつは自分の子どもに自分の音楽を聞かせてるに違いない。サン・ラを、ブラックジャズを、あいつ自身の作った毒性の高いトラックを聴かせてるに違いない。

あいつが音楽をやめるわけなんか無かったんだ。あの要塞の中で子供と遊んでる。子ども育てながらトマス・ピンチョン読んでやがる。表紙をインスタにあげてやがる。ちゃんと読んでんだなって思った。「重力が衰えるとき」っていう未来イスラム探偵SF小説を教えてくれたのもあいつだったよ。

もしかして最低かもしれないが、SF読むより、トラック作るより、悪いことも世の中にあるぜ。それよかおれたちが信じてきた音楽や文化はムチャクチャにピースだよ。

人をダメにするかもしれないけど、人を救うことだってあるんだ。少なくとも、おれやあいつにとってはそうだ。

 おい、バンドやって音楽やってるような面してる奴が何人トマス・ピンチョン読んでるんだ?バイトバイトバンドバンドで本なんか読んでねえだろ。おれだってチョンピン読んでなかったよ。

 おれはあいつのinstagram見ただけで、負けたと思ったし、やる気になったぜ。

 面白くねえ人生なんてクソだ。

 おれたちは誰も読まないような本を読んで、誰も聞かないような音楽を聴いて、とんでもねえ音楽を作って、情熱をもって、独自のやり方で幸せになろうぜ。

 おれはworld travelerを辞めることにした。

 全然特別じゃねえ、今、この時から発信していくからな。

これからもよろしく頼むよ。

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2016年10月 8日 (土)

朝に幸あれ

 朝、6時。おれは総武線各駅停車で家に帰る途中だった。すげえ寒い。もう10月なんだ。

 

 小説を持ってきていた。金子光晴とブコウスキーだった。むちゃくちゃな選択だろ。中学生みたいさ。とにかくひでえ読み物が読みたかったんだ。金子光晴の方は女房をパリにやって、自分はジャワとかマレーシアとか東南アジア経由でとんでもない詐欺なボーフラ生活しながらフランスを目指す話だ。ブコウスキーの方は「くそったれ!少年時代」だ。とにかく人間の尊厳を木っ端微塵に踏みにじるような内容さ。序盤は家族の話でほっこりするけどな。


 電車内はめちゃ寒い中さらに冷房がかかってやがる。まだ夏の気分なんだ。だから寒いよ。おれは本を取り出して読んだけど、文字は全ッ然、頭の中に入ってこない。そういうときってあるよな。どうしようもないとき、おれはblogを書くような気がしてる。blogを書いてないときはだから、本を読んでるって言いふらしたいわけじゃない。愚にもつかないビジネス新書とか読んでんのさ。なんでそんなもん読んでるのかって?意外とおもしろいぜ。おまえも読んでみろよ。


 おれの友だちは本が好きなやつが多いぜ。昔、はじめてバンド組んだNはサラリーマンになってSNSに何ていうタイトルのビジネス書を読んだか投稿しまくってたことがある。びっくりしたぜ。
同じバンドのMはどうやら編集者になったみたいで、いろんな本を手掛けててこれもびっくりした。
世界的ピンボーラーのKは助手時代ずっと詩集を作ってたし、
芸術家になったiはあんなに本が読めない、目がチカチカするからって言ってたのにめちゃ難しい心理学や構造主義の本とか読んで、こんどイギリスに行くんだってよ。
あいつの個展今渋谷でやってるから観に行ってきたらいい。

 そう、おれは昨日の朝iの個展の手伝いをしてきたんだ。あいつけっこうメジャーな会場でやってんのさ。渋谷のヒカリエだぜ。びっくりするよな。木の肌をつかった作品で、それを楽譜にして音楽を生成して、それにあわせて舞踏家が踊る映像が流れてんだ。驢馬のPV作ってくれたY監督も来てた。みんな仲間さ。iがイギリスに行ってくる前の最後の展示なんじゃないかな。


 iの搬入は相変わらず要領が悪くて、発想も構想もマジかよ!!って感じだった。だけど関係ないよな。展示はできてるし、認められてる。おれは悔しかった。おれときたらバイト先が工事だからって理由でいきなり休みになって、友達手伝いに来てんのにさ、社員から電話かかってきて「工事終わったから来い」だとよ。そんでディナー働いて、夜中に驢馬の練習してきて今、帰りだ。


全然展示も味わってねえし、おれはイギリスにも行ったことねえ。なんなんだよ。チキショー


考えろ、考えようぜ。ただ外国に行きてえわけでもねえんだ。おれはもっとおれの仕事をしたい。おれでしかできないことをしたい。そんなこと言ってできてないうちはガキだな。


なんだかんだ言って、友達の展示を手伝いに行ってよかったよ。こういうこと思わなくなったり考えなくなったりしたらオシマイだよな。

10/12までiの個展はやってるんだって。

毎日新しく生まれた気分で生きていこう。


おれの今朝はまだ昨晩の続きだけど、みんなの朝は今始まったばかりだろ。


おれたちみんなの朝に幸あれ!だ。

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2016年9月17日 (土)

上海に行くともだちのサイエンティストへ

syo kamataへ


 久しぶり。おまえ上海に行くんだってな。聞いてなかったよ。だったらもっとはやく会っておけばよかったな。おまえが上海に行く前にはもう会えなそうだ。いったい何しに行くんだ?働いてんのか?

 宇宙の研究をしてんだっけ?ダークマターだっけ?上海の怪しい研究所でマッドな博士になるのかい。すげー怒りそうだからこの質問はもうやめとくな。


 おれは今、山形県の酒田にいるよ。一昨日からソロツアーに出てるんだ。三月にも一緒に回った人のツアーにくっついて回るはずだったんだが、まあ、くっついてってのは語弊があるけどな。メインアクトの人が体調不良でキャンセルになっちゃったんだよ。

だから急遽、おれがトリでイベントをやらせてもらうことになった。悪いけどチャンスだと思ってがんばってる。


 一日目の秋田は初めて行く牛島ってところで、zampanoや驢馬のときに観に来てくれたお客さんが集まってくれた。嬉しかったよ。みんな仲間なんだ。すげえ熱く迎えてくれるんだよ。初めて会う地元のバンド、フグロって人たちがかっこよかった。フグロって密造酒って意味なんだって。ブルースとジャズとトラッドフォークを混ぜ合わせたような音楽性でさ、お前もきっと気に入ると思うよ。トリは梅若会っていう秋田民謡の本物の猛者が急遽駆けつけてくれた。最高だったな。


 二日目は酒田に来て、いつも一緒にやってる乞食晩餐会ってデュオと対バンだった。おれの兄貴分のふたり。乞食を観るとさ、もっとチャレンジしたくなるんだよ。人々は感性がドライになりすぎていい音楽に出会っても反応しづらくなってると思うのな。乞食はまず酒とかぶっかけるんだ。びしょびしょにしちゃうんだよ。聴いてる側は騒ぎたくなる。


 今夜は象潟って海沿いの街でやる。初めて行くところだ。どんなだろう。


 でも、おまえは多分こんな話聞きたいんじゃないよな。ツアーに付き物のトラブルやよもやま話を聞きたいんじゃないか?
何から言っていいのかわからんが、平和にすすんでる。こんな風に言うと手抜いてんじゃないかと思われやしないか。考えすぎかな。

 強いて言うならさ、昨日、秋田から酒田に行く途中の海に寄ったんだ。今回おれを呼んでくれた山影のキョーダイと、山影どんの彼女のよっちゃんと三人でさ。

夏が終わって秋が到来しようとしてる日本海はむちゃくちゃに美しかった。


 音楽はさ、美しい風景の中では副次的なものに過ぎないんだ。おれは確かにギターを弾いてたが、むしろちょっと余計なことだ。それより、すげえ美しくて素晴らしい瞬間を山影どんとよっちゃんと過ごせてよかったよ。


 おれたちさ、昔、海に行ったよな。ガキの頃だよ。どんな目的で行ったのか、全然わからねえけど、みんなでチャリンコこいで行った。

あのときの仲間はもう散り散りだな。ミッキーとは未だによく会ってるよ。でもそれ以外のやつらは疎遠になってしまった。

だけどおまえも含めて、他のやつらもこのブログを読んでるような気がする。あの時のことを書いた昔の歌の歌詞を上げるよ。


 実は海の歌、新しく書いたのもあるんだ。でもそれはまだ上げない。おまえはしばらく日本のライブ来れなそうだけど、おれが上海まで演奏に行けるようにがんばるよ。


 上海でも元気にやれよ。


 
 


 野苺


誰かが誰かのこと 思い出せないときは

思い出そうとしても 忘れられない

カラスがゴミ袋を 嘴で突き破った

濁った声で笑う 陽はまだ昇っていない


野苺 野苺 おまえは 呟く

あんまり意味のない昔思いついた遊びだよ


ある晴れた日曜日 海へ出かけた

一人は口笛吹きながら 一人ははぐれていなくなった

法律や生活や社会的ルールじゃ

自由な魂を縛ることはできない

もしもおれたちの選んだ道が

間違いだったとしたら

キャンディー100個くれないか?


野苺 野苺 野苺 野苺


おれは もういくよ
おまえも ついてくるかい 
答えなら 答えなら 答えなら もうすでに
手に入れた 自由な魂だけが


野苺 タフロフは言った

野苺 おまえがどんなに

野苺 偽っていても

野苺 一目でよくわかる

野苺 帰れ

野苺 倒錯の森へ

野苺 ここはおまえの

野苺 いるべき場所じゃない

野苺 忘れようとしても

野苺 思い出せない

野苺 呟いてみよう

野苺 野苺 野苺


 
 
 

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2016年9月13日 (火)

Mad Season/コンフリクトしてるおれの脳ミソ

「Mad Seasonはアル中の更正施設で出会ったメンバーに、ひどい薬中が加わってできたバンドなんだ。結局メンバーは死んでしまってアルバムは一枚だけしか残っていない。リラックスしてんのかやる気ないのかわかんない君らの演奏を聴いたとき、まるでMad Seasonだと思ったよ」


 そう教えてくれたのは近所の珈琲屋の髭男だった。
最近仲良くなった髭男はノーウェーブなボタンダウンのシャツを着て繊細な倍音のノイズを奏でるギタリストなんだ。

Mad Seasonって知らなかった。どんな音だろう。久々にレコード屋に行く用事ができた。聴くべきものがなくて困ってたんだ。

      ◆◆◆◆◆◆


 おれはお茶の水のレコード屋でMの欄からずっとMad Seasonを探していたが見つからなかった。

 新作の棚を見ると、なぜかFaith No Moreが再発していて、なぜかニック・ケイヴが再発していて、なぜかアラン・ヴェガの追悼コーナーにはスーサイドの二枚目が置いてあった。懐古的なムードだ。この流れでMad Seasonも置いてないかなと思ったがそんな名前は無かった。


 例えばポップグループは超有名な1stアルバムよりも、二枚目の方が格段にいい。世間的な評価は違うようだがおれはいいと思ってる。世の中には稀にそういうこともあるんだ。
 だが、スーサイドの二枚目は果たしてどうなんだろう?おれの心の中のスーサイドを超えてくれないのなら知らない方がいいって思ってしまう。往々にしてあるよな。

 もし、スーサイドの二枚目がよかったら、誰か教えてくれ。


 新作の棚を順に探していったら脇の方にアパラチアンフォークミュージックのブラインド・アルフレッド・リードというミュージシャンの豪華ブックレット付きCDを見つけた。CDにブックレットが付いてるというよりも、本におまけでCDが付いてるような有り様だ。今後こういった本>CDという形態は増えていくんだろう。

 本末転倒とも思う。だが本の需要もCDの需要も世の中にはなく、本とCDが好きなおれはこういった作品には素直に心惹かれてしまう。ジャケットもいい。DUST TO DIGITALというレーベルが出していて、そのレーベル名から謂わんとしているコンセプトが伝わってくる。


 そんなことを考えながらCD棚の前に突っ立っていたら、不意に横から知った顔が話しかけてきた。

 

「おい、NGじゃん。」

 

「ナオアキさん。何やってんの。」

 

「これから現場なんだけどちょっとな。これ見つけたぜ、」

 

 ナオアキさんが持ってたのは日本の80年代ニューウェーブぽいバンドのCDだった。


「全然知らないけどやばそうだな。おれはこれ買おうかどうか迷ってるよ」

 

棚に置いてあるBLIND ALFRED REEDの豪華ブックレットを指差した。


「なんだこりゃ?全然知らないけど」


「おれも今日初めて見つけて知らないんだけどさ、買おうか迷ってる。」


「ちょっと一杯だけ飲まないか?」

 

「もちろん。いいぜ」

 

     ◆◆◆◆◆◆◆◆
 

 ナオアキさんは、おれの尊敬するミュージシャンだ。ファンクバンドでレコードを出してる鍵盤奏者。アナログ盤を出すってのはさ、すげえことなんだよ。やっぱり。

 ナインティーンというグループではカセットテープも出してる。「イージー&イージー」の作曲者と言えば、このblogの読者にもわかるかもしれない。すげえいい曲だよな。


 お茶の水駅の近くにある一杯飲み屋に入った。そこで生ビールとハイボールを飲みながらふたりで語らった。


「最近はさ、初期のユニコーンを聴いてるよ。」

 

「相変わらず突いてくるな。初期のユニコーンてどんななの」

 

「なんつうか、あの頃、なんだよ。あの気持ちになるっていうか。」

 

「哀愁って言うのとも違う。青臭いってのでもないし、懐かしいってわけでもないんだよな」


 すぐにハイボールを飲み干してしまっておれたちは次の酒を頼んだ。

 

「おれはこんなの読んでるよ。中上健次の"路上のジャズ"。新宿とか、政治とか、アルバートアイラーとか。なんていうか中学生みたいな気持ちになるな。」

 

「キてるな」

 

「コンフリクトしてくる、気持ちが、よみがえる。」

 

「大丈夫か?コンフリクトてなんだ?そんな言葉知らんわ」


「フリクションてバンドあるだろ。軋轢。コンフリクトはさらに軋轢が重なりあって、葛藤。」

 

「ああ、なるほど」

 

ナオアキさんはあきれ笑いだった。

 

「ライブはどう?」

 

「今週木曜日からひとりで秋田に行って、酒田に行って、象潟っていうところに行ってくるよ。」

 

「酒田か。こないだおれたちもツアーで行った。NGに教えてもらったラーメン屋は結局行けなかったな。」

 

「ケンチャンラーメン、絶対行った方がいいのに。秋田にも行くべきだよ。秋田と酒田は近いし、二つの都市の音楽は交流があるんだ。」


「酒田じゃないが、おれたちがこないだ行ってきた街は、昔で言うナディフみたいな本屋があってさ、なんつうの、いろんな情報が集まってくるとこ」
 

「文化を発信してるんだな。」
 

「うん、まあ、そういう雰囲気。そこでおれたちのCDを扱ってくれてんだわ。

その本屋が音楽をプッシュしてくれて、地元の学生やそこで働いてる人たちが気に入ってくれたみたいなんだ。街の人が集まって、すげえ盛り上がってくれて嬉しかったよ」

 

「そういうホットスポットみたいな場所ってあるな。そういう場所だったり人と出会えることが大事だし嬉しいよね。

 秋田にしののめっていう居酒屋があって、すげえ日本酒おいてある。そんで酒飲みの魔物みたいな人たちが毎晩集ってるんだ。みんなの大事な所なんだ。

 酒田はなんといってもブルースヒロってブルースバーがあってさ。いろんなミュージシャンが集まってんだ。けっこう渋い人たち。焼酎のお茶割りが濃いんだよ。八割くらい焼酎さ。
おれ酔っぱらってお店の猫を逃がしちゃって、叱られたよ」


「最高じゃん。おまえは最悪だけどな。
てか、酒の話しかしてねえけど。」


 


      ◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 おれたちはたくさんのよもやま話をして店を出た。9月の風が生温いムードと涼しげな気持ちの間くらいの温度で吹いていた。


「おれたち、こうやってオッサンになっていくのかな?色んなことあってさ。どうせならいいオッサンになりてえな。」


「いいオッサン?ジェントルマン的な何かか?何言ってんの?最悪だわ。最底辺な発想だわ。」


「ジェントルマン的なものの逆だ。飲んだくれてくだ巻きまくって、赤ら顔で何にでも話しかけるような、そんなオッサン。」


「どっちにしろ嫌だな」


「なんか色々あってもさ、それを出さないようにしててさ、でも表現の中につい隠れた感情の翳りが出たり、そういう風がいいんじゃないか?」


「わかる。だけどおれには当分難しそうだよ。」


「おい、ショボくれんな。元気出せよ。おまえのblogは最高だ。天才的だな。おれに言わせれば。みんなチェックしてるぜ、彼女ができたからってサボっちゃダメだ。」


「書くよ。今日のこと書いていいかい?」


「やめろ」


 

      ◆◆◆◆◆◆◆◆

 
 

 おれのコンフリクトを読むのが最高なんだろうか。そうは思えないし、わからねえが今日は書いてみた。

 色んなことがあったんだ。

 それは自分のしたことだったり、突然訪れた通り雨のような防ぎようのないこともあった。
書ける範囲でもう少し書こうと思うんだ。読もうと思って訪れてくれる人たちには待たせて悪かった。
待ってねえよ!!!!という怒号が聞こえてくるな。

 彼女ができたんだよ。最高さ。下町の女だ。ビビるぜ。

 ある人と突然の別離があった。この世からいなくなっちまったんだ。青天の霹靂だった。覚悟していたが吃驚したし、悲しみの縁に立っている。この件は今はまだ書けない。

 サボテンは2つは育ち、1つは枯れた。サボテンのことをなんて数えたらいいかわからない。

 サボテン姉妹は上からサボ子、サバンナー、サボミという名前をつけた。超可愛いだろ。サボミが枯れてしまったんだ。サボミとは昨日お別れをした。

 彼女らとは別に、新たなサボテンが2つ家にやってきた。彼らは従兄弟でサボトロとサヴァイブという名前にした。

 家族が増えて、家族が一人いなくなった。嬉しい気持ちと哀しい気持ち。おれはどうしたらいい?

 ただ淡々と毎日を歩いてくしかない。


 明後日から東北にソロツアーに行く。全部は書けなくても、少しずつだけでもここに書いていこうと思ってるよ。


 東北日本海側の街に住む大好きな人たちに会えるのが楽しみさ。


 ジョニーは秋田にいるらしい。彼は故郷に戻ってきたんだ!喜んで騒いでるのはおれだけかい?なんでおれが喜んでんのかよくわかんねえけどな。

 みんなで浴びるほど酒を飲もうぜ。

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MO MOバンスキング

20160915(木)

@MO MO  JUNK☆STAR

入場無料・1ドリンクオーダー・投げ銭

18:00オープン 19:30スタート

スペシャルゲスト
夢野カブ
N.G.barbaroi

出演
day off
フグロ
yamaZy

お問い合わせ
山影 080-3196-4716
MOMO JUNK☆STAR
秋田市牛島5-2-38

018-832-8881


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2016年9月16日 金曜日

夢野カブ酒田公演

酒田ブルースヒロ

開場18時 開演18時半

チャージ2,500円1D付

出演

夢野カブ

Ng Barbaroi

乞食晩餐会


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2016年9月 2日 (金)

職務質問

 一日の時間労働を終えておれは井の頭公園のベンチで寝そべってた

夏が終わりかけていて虫たちの出すリングモジュレーターかけたようなサウンドスケープに包まれている。

湧水池を渡す橋の向こう側には真夜中の動物園があって、時折ギャッギャッギャ。んもんもうぃー。という鳴き声が聞こえてくる。

おれは湖畔に腰かけてあいつらの声に耳を傾けるために真夜中の公園に来る。あいつらの声、不思議だ。なんていう動物の声なんだ?

台風が来たり来なかったりして、おれが働いてるレストランは退屈だった。退屈でも退屈じゃなくても閉店まではいなくてはいけないから、店閉めてダストボックスにでかいゴミ袋放り込んで仕事を終えて、たいして疲れてはいないけど公園に一眠りしにきたってわけだ。

この後は、朝まで驢馬のスタジオだ。9月になりライブが三本決まってる。19日に両国と、23日には柏、25日は多摩センターの野外ライブがある。だから久しぶりにライブのためのリハーサルに入る。驢馬は今までレコーディングのための頭使う作業ばかりだったから楽しみだった。

あと30分、眠ろうかどうしようか迷っていると自転車が近くまで来て止まった。二人組の警察官だ。

「ちょっとお兄さん、時間いいですか?」

よくねえよ。と思いながら起き上がった。

「鞄の中を見せていただきたいのですが…危険なものは持っていないですよね」

 

持っていたって言わねえだろ。おれの今夜の持ち物は驢馬のために使うエフェクターとギターだ。最高の凶器だ。触るんじゃねえ。と思いながらもおれはとても気の優しい小心者なので「どうぞ。」と言ってしまった。ファンの皆にはなんて申し開きしたらいいかわからない小市民ぶりじゃねえか。

「楽器はギターなんですか。これは。」

 

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「ガットギターです。」

こういうやり取りは初めての演奏場所やツアー先でもよくするやり取りだ。だから慣れたもんさ。しかしエフェクターケースを探ってた警官は怪訝な顔でしつこかった。

「この金属の棒はなんですか?なにに使うんですか?」

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「スライドバーです。ギターの弦の上を滑らせるんです。」

 

「これは金属の歯が付いていますね」

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「ソムリエナイフです。ギターの弦に挟みます。倍音をだすんです。」

 

「やすりがありますが、何のために使うんですか?」

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「ギターの弦に挟むんです。あと爪を切るときに」

 

「拡声器がありますね」

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「楽器です。これでハーモニカを吹くんです。」

 

拡声器は不味かったみたいだ。あと巻きタバコのシガーケースも不味かった。

 

「これはタバコですか?」

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「タバコです。演奏には使いません。」

 

「楽器は趣味でやられているんですか?」

 

「いえ、プロです」

おれはハッキリそう言った。

 

財布の中のカードの名前を確認していた警察官が

「芸名とかあるんですか?違う名前のカードとかお持ちじゃありませんか?」

 

とか抜かしやがった。

 

「芸名はNGです。」

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警官は「?」の顔のまま固まった。

このクソが。時間の無駄だ。

 

 くだらないやり取りを終えておれは驢馬のスタジオに向かった。あの警官ふたりはもしかしたら死ぬまでガットギターの音を聴かないかもしれない。スライドバーや況んや鑢やソムリエナイフで演奏されたギターの音を聴かないかもしれない。フリーインプロヴィゼーションという音楽がこの世にあることを知らずに死ぬかもしれない。拡声器でアンプリファイされたブルースハープの音を聴かないかもしれない。おれの拡声器は録音できてヒップホップのサンプラーみたいなことだってできるんだ。ヒップホップくらいはわかるだろ?おい。

驢馬は三枚目を作っている。

その蹄で乾いた土地を踏みしめ、病めるものにも富めるものにも、音楽の素晴らしさを届ける日は近い。

警官たちが知らなかったガットギターやスライドバー、ソムリエナイフ、鑢、拡声器の音楽を不信感に支えられたこの世界に鳴り響かせてやる。

心して待て。

驢馬 gig schedule

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9月19日(月・祝)

■両国SUNRIZE
Very Ape企画
「戦慄のオルタナティヴ祭 vol.3」

 

【出演】
驢馬
MUSHA×KUSHA
ドブロク
デッドバンビーズ
妖精達
クロメ
赤い月
暗黙のストライカーズ
Very Ape

【開場】 15:30 【開演】 16:00
【前売】 2,500円 【当日】 2,800円(各+1drink)

両国SUNRIZE

http://www.livehousesunrize.jp/

〒130-0026
東京都墨田区両国4-36-6ガラス会館B1F
TEL/FAX : 03-5600-7337
MAIL : info@livehousesunrize.jp

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9月23日(金)

■柏616
【プピリットパロツアー「パロイズ革命TOUR2016~柏編~」】

w/プピリットパロ/vono vomno/river(ロマンチック日本代表!!!)/…etc

〒277-0021 千葉県柏市中央町7-26 栄ビルB1F
[柏616] TEL 04-7168-3616 FAX 04-7128-7111 MAIL info@kashiwa-616.com


http://www.kashiwa-616.com/
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9月25日(日)

■多摩センター三角広場
【青空を鳴らせ】

BadAttack / DanceWithMe / FirebirdGass / 我ヲ捨ツル / BlueVision / Horse&Deer / Hi-Gi / ENSLAVE

AM11:00スタート
FREE Live!

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2016年9月 1日 (木)

人生はスライドバーなのか

 終電のお茶の水駅で総武線津田沼行きに乗り換えた。


 一番先頭の車両の座席には蝉がいてワギャワギャ車内を飛び回っていた。座ろうとしていたOL風の女もワギャワギャ言っている。電車は発車しようとしない。風が入ってくる。夏の匂いがする。もう八月も終わりだ。


 驢馬はずっと三枚目のプリプロをやっている。すげえ出来だと思うけど、同時に深海の洞窟をずっと探っているようにも思う。観たことのない生物がとんでもない水圧と温度の中で暮らしてるのを発見して研究しているような、そんな感じだ。わかるか?おれにもよくわかんねえときがあるよ。凄まじい雰囲気がある。


 別の活動では日本古典音楽のS先生の新作能(?)の舞台にギターで伴奏するっていうことをやってる。これもまだリハーサル段階だ。とんでもないプロットで、ここでは詳しく言えないんだが、日本人が他国の異文化や農作物を受け入れてきた過程を時を越えて物語化したものなんだ。和琴のオープンチューニングでボトルネックスライドでブルースフレーズ弾いたりしてるんだが、おれはいったい何処のどいつなんだ?って気になるだろ。和琴の解放弦のチューニングするだけでとんでもない響きになるよ。


 ソロでも相変わらずやっている。ソロはハッキリ言って、全然人気ねえな。

前のこと知ってる人たちはザンパノのことを思い出したそうな顔で聴いてるのがわかるよ。おれも悪いんだけどな。こうやってもああやってもザンパノのときの演奏ってのがあって囚われてるように思う。囚われても仕方ねえんだけど。

曲のジャンルっていう意味じゃなくてブルースをやろう。

今、生きてる中から出てくる音をギターで出すのがブルースだって、そう思ってライブをやってる。

夏が終わりつつあり、乾いた気持ちいい風が吹いている。


「スライドバーだよ、人生は」


っていう憂歌団の内田勘太郎のDVDがあって、高校生の頃それを観てボトルネックを作った。
でも人生がなんでスライドバーなのかは高校生心に全然わかんなかった。

ケリージョーフェルペスって人がいてさ。
タトゥーだらけでスライドやったりフリーインプロやったりで、おれちょっと最近気になってて好きな人なんだけど、
その人がグッドナイトアイリーンやってるのね。レッドベリーのトラッドの曲だよ。有名な人だとさ、カートコバーンもカヴァーしてる。アンプラグドで。


あの内田勘太郎のDVDも、今観てみたらスライドバーの意味がもうちょっとわかるような気がするな。


ちょっとスライドでやってみるわ。

ソロライブ


9/2(金)渋谷LUSH 


9/4(日)鷺ノ宮cafe musa アンデパンダン


9/15(木)秋田 MO MOバンスキング

@MO MO  JUNK☆STAR

入場無料・1ドリンクオーダー・投げ銭

18:00オープン 19:30スタート

スペシャルゲスト
夢野カブ

N.G.barbaroi

出演
day off
フグロ

yamaZy

お問い合わせ
山影 080-3196-4716
MOMO JUNK☆STAR
秋田市牛島5-2-38

018-832-8881

9/16(金)酒田

夢野カブ酒田公演

酒田ブルースヒロ

開場18時 開演18時半

チャージ2,500円1D付

出演

夢野カブ

Ng Barbaroi

乞食晩餐会

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2016年8月 9日 (火)

2016夏 サボテンサボ子の観察日記

 サボテンのサボ子は6月に家にやってきた。

三兄弟で、来たときはまだ小さな赤ちゃんだったよ。丸い小さな綿毛みたいで、本当にこいつがサボテンになるのかな?って疑ってしまうほどだった。


最初、おれはサボ子たちにどう接していいのかわからなかった。サボテンはさ、砂漠の植物だろ?だから水をやったり、かまいすぎたらよくないのかな?

さいわいおれの部屋は狭いけども日当たりはアホほど良い。日当たりだけで言ったら砂漠みたいなんじゃないかな。暑くて起きる夏の毎日だ。


二週間くらい、サボ子たちは根を生やさなかった。ずっと小さなまん丸のままなんだ。


おれはとっても不安になったよ。調べたら湿気が多すぎる場合には根腐れという症状だってあるらしい。根も出てないのに根に腐られても困るよな。弱った。やっぱり水はもう少しあげた方がいいんだろうか。心配で毎日サボ子たちをひっくり返して根っこが生えないか観てみたよ。でもこんなにひっくり返すのはヤボだなって思って止めた。


もしおれがどこかに根を生やすつもりだったら、って考えた。毎日ひっくり返されてどれくらい根が出たかチェックされたらたちまち嫌になってしまうんじゃないかな。

砂漠の生き物とは言え、この子達にも水は必要らしい。

放っておくわけでもなく、かまいすぎるわけでもなく、、、そういう関係は存外苦手なんだなと気づいた。


それからはサボ子本人ではなくて、土の湿り気を注意深く見るようにした。心配しすぎるのを止めようと思った。

人が何かするより光や風なんかの環境的要因の方がサボ子に与える影響は大きいんだ。もしこの部屋で枯れてしまうようだったら、砂漠よりもひでえ部屋だということさ。

人間も生きてるし、この部屋はそんなには悪くないって思ってる。


誰かのことをこんな心配になったり、不安に思ったりしないと思い込んでた。

サボ子のことばっか考えている自分を自覚して、驚いてるよ。


  

サボ子がやってくるちょっと前に、武者小路実篤の「棘まで美し」っていう小説を読んでた。薔薇が棘まで美しいように人間の欠点もまた美しい…とか書いたあらすじを最初に読んだときは嘘だろーって思ったよ。読んでみて震えるほど感動したけどな。


サボテンは棘ばっかりさ。美しいって言ったら、いきなりで嘘臭いかもしれないけど、おれはサボ子のことが大好きで、とても大事だ。
棘は欠点に思われるかもしれないけどサボテンにとってはそうじゃないよな。必要な個性だ。棘だらけなのがいいんだよ。それが自然ならさ。
そう思うようになった。

サボ子は少しずつ大きくなって、小さな瓶の土の中に根を張ってきている。

君がいつか花を咲かすことを心から願っている。

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2016年7月19日 (火)

朝の13分間の過ごし方

 暑くて目が醒めた朝、空き缶と満杯の灰皿がいきなり目に入った。


 昨晩どうやって寝たのか全然覚えてないが、顔面の皮膚の奥が熱く、足の筋肉がだるく緊張したままだから、また酒をたくさん飲んで酔っぱらってそのまま寝たんだとわかる。


まだレストランに出勤するまでには時間があった。何はともあれシャワーを浴びることにした。ココペリの首飾りが机の上に投げ出されている。こういうものを外さないで寝てしまった方が酔っぱらったときに無くさないと思うが、どうしても外して寝てしまう。だからたまにいなくなったときはココペリは雨を降らしに行ったんだと考えることにしている。


シャワーを浴びたあと、もう少し寝たかったが朝飯を作ることにした。

酔っぱらって酒が残っている朝は、飯を食うのが二日酔いを醒ます一番の方法なんだ。みんなはちがうかい?二日酔いでよく食えるなって言われるよ。おれはなんだかそうなんだ。


米を研いで鍋を火にかけた。沸騰してから弱火にして13分、その間に味噌汁の準備だ。

ここのところもっぱら昆布と鰹節の出汁だが、葱とワカメと出汁がいい具合になったころに味噌を切らしていたことを思い出した。

闇金ウシジマくんに出てくる部屋住みのヤクザの「あ、味噌切らしてた、兄貴~、すまし汁でいいっすか?」という台詞を思い出した。すまし汁ってどうやって作るんだっけ?


 とりあえず秋田で山影のキョーダイにもらった味道楽という万能つゆを鍋にぶちこんだ。

味噌汁じゃねえしすまし汁のことはわからないが、なにもかもが完璧な味に思えた。


味道楽が切れたらそのときはまた秋田に行くつもりだ。


13分たったら、さらに13分火を止めて米を蒸らす。

なぜ13?不吉だからやめなよって言われたりするけども、現在の研究では13分が最もいい具合に米が炊けるのだ。ちなみに米に対する水の割合も、CC換算で1.3倍にしている。13という数字がいいんだ。素数には力があるからな。


米を蒸らしている途中、外に空き缶を捨てに行った。おれの家の周りの朝は慌ただしく、会社員が足早に浅草橋を渡り、シャネルの香水をプンプン匂わせる経営者風のオヤジがアキレス腱を伸ばしたりしてやがる。


おれは川沿いのレストランの灰皿の前で橋を競争する人たちを煙草一分間ぶん眺めていた。

今はのんびりしているが、結局はおれも走る羽目になる。それまでどう過ごすか、いつも考えている。走らなくていい人生もあるのかもしれないが、どちらにせよやっぱりおれは走るだろう。


本当は、最近一緒に暮らしているサボテンのサボ子について書こうと思ってたんだけど、もう時間労働の出勤だ。飯くってから行ってきます。

 走って電車に乗って駅前のパン屋でバケット買ってレストランに行くよ。ディナーではピザをのばすだろう。


おれはまだ音楽で食えてないギタリストだ。キッチンで指を切らないように気をつけるよ。

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2016年6月 1日 (水)

画面越しに見るスロットマシン

 終電車、隣に座ってるおっさんが、スマートフォンでパチスロの動画を観ている。

おれはギャンブルをやらないから、パチスロの動画を見てそれがどんな意味があるのか、なんかテクニック的な参考になるのかまったくわからないけど、ギャンブルに中毒になってるのは楽しそうだなと思った。

 インディアンのメディスンマンから聞いた話だけど、合衆国政府は、ネイティブアメリカンの精神と文化を滅ぼすために、ネバダで核実験をして、ラスベガスにカジノを作って、田舎に格安のリカーショップを展開させて、マフィアのドラッグを放任して、インディアンたちを放射能を浴びせアルコール中毒、ドラッグ中毒、ギャンブル浸けにしたあとにファストフードチェーンの味を覚えさせて、精神をズタズタに引き裂いたんだって言ってた。

 それはインディアンの被害妄想かもしれない。
 わからないけどさ、ただ、おれは実際に日本の福島に行って聞いた話では、彼の地で暮らす人にとって深刻な問題は、政府から給付された金をパチンコやギャンブルにつぎ込んで働かなくなった人たちだって聞いた。そのときインディアンの話を思い出したよ。

 こういう話、興味あるかい?おれはちょっと距離を置いている。苦手なんだ。
 正直さ、何て言ったらいいかわからないんだよ。

怒りや憤慨を感じても、それはまるで自分が社会的に正しいことを前提とした、己とかけ離れた架空の感情のように感じてしまう。


 おれは電車の中でパチスロの動画を観ているオッサンの横で最近Oが書き上げた小説の原稿を読んでいた。

今回の話はNGがモデルになったミュージシャンが登場する恋愛小説だった。

 自分がネタになっていると聞いて、ゴミみたいな描写の連続とバッドエンドを想像していたけれど、意外にもスッキリした話で、ミュージシャンの描写はOには言ってないはずのエピソードまでも正確に言い当て描かれた文章で面食らった。

 作品てなんだろう?作品はいつ終わるんだろう?どこまでが作品で、どこまでが実人生なんだろうか?

考えながら夜更けに行った。この小説は、もうおれが批評するような次元の作品ではないと思った。自分が出てくると客観視しづらいし。

 Oの書いた話は、インディアンのギャンブル依存の話よりもずっと身近で、そして現在のなんかどうしようもできない、やるせない感情を描いた物語だった。

今、生きているこのときから物語が生まれるのか?
他人の国の他人の苦境じゃない、今、このときだ。この電車に乗っているとき、この街を歩いているとき、何を感じているか?

カマボコ板いじってるんじゃねえ、って言いたいわけではないよ。
今、おれもカマボコ板でこれを書いている。
 ハッキリ言って、どうしようもない時間を費やすくらいなら、カマボコ板でギャンブルしている方がマシなんじゃないかなと思うことさえあるよ。

書こう、と思う。

おれのここに書いている文章は、日記みたいなものだ。作品て感じじゃないよ。
ここに記されているものから、日々を何度も噛み砕いて、落ち穂を拾うようにして書いていこうと思う。

★★★★★★

「真昼の夜更け」に来てくれてありがとう。
白昼夢、てか悪夢みたいだった。
結局、夜更けの前じゃなくて隣のコーヒー屋さんの前でやってさ。とってもたくさんの人が集まってくれた。
EPPAIさんは、人々を連れ去るハーメルンの笛吹きか、あるいは総てを支配する魔王のように振る舞って。みんなの日曜日の午後を知らない場所に連れ去った。
素敵だったな。

邪の固まりのようなイベントだったけど、小学生のガキが観に来てくれた。最近仲良くなったやつなんだけどさ、そいつが目をまん丸くして驚いたり笑ったりすると、嬉しいし、なぜだか、生命の神秘を感じるんだな。おれも焼きが回ってきたのかな。

ガキがいつか未来になって、あの日曜日を夢のように思い出してくれたら、おれはなんも言うことはない。

それがいい夢かどうかはちょっと保証できないけどね


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2016年5月28日 (土)

楽しい日曜日の過ごし方

「NG、全然ダメだよ。きっとわからないし、伝わらない」
 
 監督は昼飯を食べながら言った。おれと監督は今、暇そうな女ばかりが集まる千駄ヶ谷のクソお洒落なカフェでランチしている。
 
「何がだい?あんなblogを書くべきじゃなかったって言いたいのかい?」
 
「そのこともそうだけど、その話じゃない。
今週末日曜のイベントのことだよ。あれは一体何をやろうとしてるんだ?告知のタイミングも悪いし、内容も不明瞭だ、しかもおれに招待が来てないし」
 
「うそ、招待してなかったっけ?」

「どんなことやるのか、なんにもわからない。真っ暗だよ。」
 
「いいんだ、"真昼の夜更け"なんだから。今、招待を送ったよ」
 
ランチプレートがやってきた。おれはアジフライだった。監督は鶏だった。

「おれたちは良い演奏をできるように用意している。EPPAIさんは絶対に最高だ。本物のパンクスと大道芸人が融合したようなとんでもないスタイルでストリートを廻ってる。なんの心配もない」
 
「そんなこと聞いてるんじゃないよ、内容の心配をしてるんじゃない。君らがどんな良い演奏をしても、ステージも何もない路上だ。人が集まっても、すごく良いものがプレゼンテーションできても、音楽の印象はきっと霧散してしまって、どこかに消えてしまう。君たちはそれでいいの?」
 
監督は不服そうに言った。おれはアジフライを半分あげた。
 
「旨いぜ。おれはアジフライが大好きだ」

 
「せめて後ろのシャッターの壁に磁石で布を張ったり、ステージみたいなものを作るとかさ、」
 
「いいんだ、監督。ありがとう。」
監督の言葉を遮って言った。
 
「今回、おれとOが夜更けでやろうとしてることは先物取引や闇市みたいなものなんだ。
それを街のイベントに訪れた人たちが観れるような場所で見学できるようにやろうとしている。築地に外国人の観光客が集まるだろ?
アヴァンギャルドな大道芸の先物取引市場を公開する気でいるんだ。
いきなり見せて、普通の人にはちょっとハードルが高いかもしれないけどね、おれが期待しているのは影響力を持ったオーガナイザーやインフルエンサーに印象づけること。
この街のやつらに夜更けには面白いものがあることを思い知らせること。
 クローズドな雰囲気はしかたない。本来は先物取引だから秘密裏に行われる類いのものを限定公開するんだ。
闇市だからなんの許可もとってないし、誰がやってるのか不明瞭で、それでいいんだ。
 だから真昼の夜更けというタイトルにした。」
 
「ふーん、先物取引というアイデアは面白いね。
でもやっぱりわかりづらい。それに後から「あれはああだった、こうだった」という理屈をつけるのは誰にだってできるよ。
先に言うべきだね。誰でもアクセスできるようにインフォメーションをちゃんとやるべきだ。
そして、みんなが受け止められるような土壌や環境を作らなきゃ。もったいないよ。わかられないことは」
 
「言ってることはわかるよ。
 でもさ、だから監督は隣の店から観れるようにベンチをつくってくれたんだろ?」


「ちげーよ」


監督はケーキを食べたそうだった。
 
「きっと、楽しい日曜日になる。監督、ケーキでも食べよう」
 
「え?!ケーキ食べんの?NG金もってないじゃん」
 
「おれたちの成功を祈って、監督のおごりで食べよう」
 


監督の言ってることは正論だ。おれの「先物取引」はどうも分が悪いけど、しかも話は終わっていないけれど、監督とおれは一緒にケーキを食べることにした。

「監督、はやく決めなよ。おれはフォンダン・ショコラだ」


監督はケーキのメニューを見ながら楽しそうに悩んでいる。おれはカマボコ板で彼の写真を撮った。
 
「おい、NG。勝手にSNSに上げるなよ」
 
「どうかな。今週末は楽しい日曜日にしようぜ」
 


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 5/29(日)昼12時~
"真昼の夜更け"
 日曜日の真っ昼間から、蔵前のバー「夜更けの人々」の外でバスキング!!超強力ギグを行います。
最強バスキング王EPPAI(フィドル、オルガン、指マラカス、ベル、カスタネット、スプラッシュ、カウベル、スネア、鈴、カズー、歌)と、不逞の輩NG(ガットギター)、見た目はスクエアなインプロヴァイザー川合啓介(サックス)による、正午からの凶宴!夜更けの人々らしいえげつない楽しい日曜日をあなたに!
(お店の中ではzaculoも販売しています)

出演
EPPAI (バスキング)
NG(ガットギター)×川合啓介(アルトサックス)

zaculo (アクセサリー&古着)

観覧:投げ銭

〒111-0053
東京都台東区浅草橋3丁目24 東京都台東区浅草橋3-24-7 1F


 

 

 

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2016年5月26日 (木)

真昼の夜更け

 次の日曜日にまっ昼間から、蔵前のバー「夜更けの人々」の外で路上演奏をすることになった。
メンバーはおれのガットギターと川合のサックスで、このデュオは福島のバー"Black Comet Club"でやったときにいい感じだったから、今回Oに相談してもう一度川合と共演することにした。

 対バンは一組だけ。EPPAIさんだ。
EPPAIさんはAnAn-POGAのフィドルとボーカルをやってる人なんだけど、一人で演奏をするときは、フィドル、オルガン、指マラカス、ベル、カスタネット、スプラッシュ、カウベル、スネア、鈴、カズー、歌を全部いちどきに独りで演奏するんだって。凄まじいよ。サイヤ人と大道芸人が融合したような人だから、夜更けの昼間にぴったりだと思うんだよ。

 そんなわけでおれは川合と、家の近所の墨田川でこないだ練習してた。
どうせだから川っぺりの総武線の高架下で練習しようっつってやったんだけどさ、練習してる度に頭の上を電車が「ガタンゴトン!ガタンゴトン!ガタンゴトン!」って爆音で通っていくのな。閉口したよ。

実際にはガタンゴトン!なんてもんじゃなくて、

グガトバゴン!!ンゴンゴンゴガガガ!!!ズガドゴンズガドゴン!!ンゴンゴンゴガガガ!!!!グガトバゴングガトバゴン!!!ギガンギガンガンガ!!!

っていう音だった。

この音を聴くだけで、我々の音楽の貧弱さと想像力の無さを痛いほど思い知るよな。

鍛えられるよ。暫くは高架下で練習しようと思う。


当日は12時頃から夕方までライブやろうと思う。

バスキングって知ってる?帽子回して投げ銭入れてもらうスタイルらしいんだけど、みんな有り金全部いれてくれよな!


5/29(日)昼12時~
"真昼の夜更け"
 日曜日の真っ昼間から、夜更けの人々の外でバスキング!!超強力ギグを行います。
最強バスキング王EPPAI(フィドル、オルガン、指マラカス、ベル、カスタネット、スプラッシュ、カウベル、スネア、鈴、カズー、歌)と、不逞の輩NG(ガットギター)、見た目はスクエアなインプロヴァイザー川合啓介(サックス)による、正午からの凶宴!夜更けの人々らしいえげつない楽しい日曜日をあなたに!
(お店の中ではzaculoも販売しています)

出演
EPPAI
NG×川合啓介

観覧:投げ銭

〒111-0053
東京都台東区浅草橋3丁目24 東京都台東区浅草橋3-24-7 1F

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2016年5月24日 (火)

誰もいないドッグラン

「君は彼女に謝ると言ったな。
おれはオカシイと思っていたよ。君が謝るんだったら、おれは君に対して怒ろうと思った。その予定だったからな。へらへらして謝るはずじゃなかったのか?」
 
「そんなこと言っていたっけ?おれは。本心で謝る気がなかったからな。眠かったし謝りそびれたよ」
 
「結果的にはおれが誰に対して言っているかわからない宣戦布告を宣言して、眠そうな君と、君の嫁さんと彼女が付き合わされたようなものだ。おれが本当に謝るのか?って聞いたときあそこで君が謝らなかったから吃驚したよ、何のために集まったかわからない」
 
「君のあんな話はいつもここでしてるし、君はいつもそうじゃないか。
おい、もう一時を廻ったな。店を閉めよう、この糞みたいな店を。店じゃないけど」
 
「額縁な」
 
おれたちは外に行って、額縁の外のシャッターを下ろした。

五月というのに馬鹿みたいに暑かったが夜更けになると少しだけ涼しい風が吹いてきた。隣の店は閉まっている。それをなんとなく寂しい気持ちで眺めるおれはどうかしてると自分でも思うよ。

 

「なんにせよ」

もう相当この話題に飽きてきているはずの彼は少し矛先を変えた。

「君はしっかり仕事をしなくてはいけない。バイトでもいいんだが、そういうことじゃなくて自分自身のための仕事だ。当たり前だが、まず食うことだからな」
 
「正直言って、今のおれは本業のパスが素晴らしく無くなってしまった。
前までは底辺に這いつくばっていてもまだ仕事はあったんだが、本気でヤバイよ。何もない。練習して曲を作っているが、その時間も削ってバイトに精を出すしかない状況なのに、呑気に窓の外を見てる」
 
「まあ、自暴自棄になってないならいいんだ。ただ君は女に振り回される質を持っているからな、それはダメだ。」
 
いちいち耳障りなことを言う友人を持ったものだ。

 
「仕事をせずに酒や女で放蕩して薬で酩酊して、それでいい作品を書けるならそれでもいい。
 しかしそんなものが読みたいか?それなら40年前の作品を読んだ方がもっといい。
今からそれをやられてもただの焼き回しさ。」
 
 
「そういう奴らいたな。大好きだった。みんないなくなってしまったよ。それにおれにはできなかった。」
 
 
「そう、できなかったし、できなくてもいいんだ。
できなかったら書けないわけじゃない。
仕事やなにか自分の実人生と結びつけて、なにかが書けるかもしれない。
 それは天才には及ばないにせよ、秀才を越えるものにはなるかもしれない。
そういう意味では生活の危機感や責任てのは、悪くはないんだ。
 今はまだ表現できなくても、5年後、10年後を見据えたら自分の土壌や根拠になりうるだろう。
 そういう意味ではおれは…」
 

セブンクラウンをストレートで注いで彼は続けた。
 

「家族ってのも、悪くないと思っている」


 
★▼▼★▼★★▼★▼★▼★▼★▼★


 夜更け過ぎて家に帰った。
たった十数分だがなんだか無性に長く感じた。

 相変わらず、おれの恋は宙ぶらりだったし、とにかく女々しくて救いのない作品ばかりを書く自分を持て余している状況だ。

 それでもその中に、なにか光が見えるような思いになった。
気のせいなのか?たったの二杯で酔っぱらって気が大きくなっているのか?
東京の真夜中は明るすぎる。

 交差点では信号が明滅している。五叉路だからあっちが止まれば他が動き出して複雑怪奇な場所だ。

交差点の真ん中には、フェンスで囲まれたなにもない緑色の地面の緩衝帯があって、それがこの入り組んだ交通区画のインフラの中でどういった役割を果たしているかはわからない。
昨日、そこに車が停まっているのを見た。そんなことのために君は存在していたのか?
ドッグランのようなものを想像していた。おれはあの無用な緩衝帯のなかで走り回って遊ぶことを想像した。
ドッグラン、ってなんだか哀しみを感じないかい?そこじゃなくても走っていいんだぜ。鉄のカタマリどもは自由に走っていやがる。

「この街のインフラがおれを感傷的な気持ちにさせる」

と言ったミュージシャンの友達をふと思い出した。かつて一緒に旅を廻った奴だ。バイトのことや家族のことを題材にしたロックンロールを演奏していた。
彼はどうしているだろう?去年のツアーの時に神戸で会ったのが最後だった。もうバンドはしていないんだろうか。


 どれが誰にとっての光なんだ?この道は光が多すぎる。そしてその総てが機械的に役割を果たしている人工的な光だ。


    ▼▼▼
 

 もしかして今抱いている気持ちをいつか愚かしく思い出す日がくるかもしれない。

その時のために今ここに記そうと思う。

人工的な光だろうが、その光を見て進むことができる。おれたちのやっていることは真っ暗闇のドブさらいだが、必要とする人がいることも確かなんだ。


「未来?未来なんて、誰にもない。自分で作るんだ」


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2016年5月21日 (土)

友情

「どうした?浮かない顔をしているけど。」
 
「ああ」
 
「昨晩は結局どうなったんだい?」
 
「それは今は言えないんだけどさ」
 
「まあいいけど。笑えるね。まだ夏が来たわけじゃないのにそんな憂鬱な顔をしているのは。」
 
「おれはいいと思うんだよ。だけどお互いの状況が違いすぎる。社会的な格差さえも感じるよ。それでもそれを乗り越えるのは…」
 
「言うまでもないさ。未来がないんだ。」
 
「そりゃあないさ。未来どころか現在だって時間さえも信じていないからね」
 
「君のことをモチーフにして、動物が人間に恋をする物語を書こうとしたことがあったよ。くだらなすぎてやめた。だけどまた君は性懲りもなく恋をしているんだ。笑えるな」

「仰る通りだ」
 
「ああ、隣のお店の娘だろ。彼女は普通の娘さ。君はいつも自分のことを度外視して普通の娘を好きになるな。前の相手もそうだった。君のやってることを寧ろ嫌っているくらいだったからな。
だが、今はもっと悪い。彼女は憧れているんだ。この、クソみたいなヘドの出る世界に。憧れは一番危険さ。己の身を滅ぼす、それこそ未来のない動機だ」
  
「悪くはないはずだ。おれたちみたいにドブさらいのようなことをして泥濘の中で何かを掴む仕事もある。
あの娘のやっていることはそこで掴まえた鉱脈の原石をきれいに輝かせて世間の普通の人にまで伝える仕事だ。そういう人がいなかったら、おれたちのドブさらいも知られることなく打ち棄てられて終わるだろう。」
 
「くだらないね。ドブさらいを知らせなければ知らないような半端な生き方をしているような人間には、一生知られなくたっていいんだ。問題にもならないよ」
 
「君はいつだってそうだな。」
 
「いいか?おれたちの生きているのは憧れなんかじゃない。現実なんだ。
そしておれたちのやっていることは誰に求められることのない形而上的なドブさらいだ。ビジネスじゃないんだ。」
 
「そんなことはわかりきっている。いつもおれたちは無謀なことをやって虚無への供物を捧げているんだからな」
 
「いや、まだわかっていない。あの娘は店をやっているだろう?お客さんが来て時間を過ごして何かを得て帰っていく。それは広義では、いいことなんじゃないか?
だが、おれのやっているこの場所は店なんかじゃない。店をやる気なんかハナからないんだよ。
看板も無いし、メニューもないどころか、この場所が一体何のためにあって何をする場所なのか?みんな愚かすぎて気づいていないんだ。バー?ふざけるなよ。こんなバーがあるか?こんなふざけたバーが。誰もがここを店だと思って勘違いして酒を飲んで金を払っていく。滑稽だと思うよ。」
 
「そうだな。強いて言うなら、この店は人間の愚かさを額縁に入れて見れるように展示している四次元の絵だからな」
 
「彼女のやっていることはそういうことじゃない。店さ。この周りの土地にはくだらないお洒落な店がたくさんあるだろ?くだらない祭りや、くだらないしきたりと、そこから脱したと思ってオシャレな形骸的な店をやっているガキどもだ。オッサンのようなガキだな、おれから言わせれば。地元のジジイババアどもの二世三世のな。あの娘は確かによくやっている。店として。
だがおれたちのやっていることは店じゃないんだ。嘲笑さ。人間どもを吊し上げているんだよ。この土地に棲むジジイババアどものクソみたいな店をおれは全部潰したい。問題にもならないやつばかりだけどな。やり口が違うんだ。」
 
「そんなに言うなよ。」
 
「わかっていないようだな。君は綺麗事が好きなんだ。いつもそうだ。しかし本性はおれの考えと大して変わらない。周りの仲間を観てみろよ。君の仲間は悪意のある人間ばかりじゃないか。」
 
「わかっている。そんなことはわかってるよ。確かに悪意の塊ばかりが仲間で、おれは悪意を愛している。でもそれだけじゃないと思う。なにかがあるんだ。悪意は美しい。人間は愚かだ。その狭間に苦しみがあって、何かがある。それをつかみたいんだ。あの娘のやっていることはおれたちのやり口じゃない。だからこそおれはその狭間に秘密があると思っている」
 
「君の得意分野だな。希望的観測と絶望視の狭間でドブさらいをするのは。気がすむまでやってみたらいいさ。ちょうど面白い事件がなくて退屈していたところだ。」
 
最後に彼は
「ほら、苦い恋の味がする珈琲があるよ。飲めよ」

と言われた。

とても苦い恋の味がした。

「苦い。とても苦いよ。それでもおれは好きなんだ」

くっ、と言って彼は笑った。

「綺麗事のほうが、受けるんだろうな」
 

そして「これでも読んだほうがいい」と言って、武者小路実篤の「友情」という小説を貸してくれた。

「純情な恋とは何かを教えてくれるぜ」

 


 
(※この物語はフィクションです。実際の人物・団体とは一切関係ありません)

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2016年5月20日 (金)

密漁 / スペースデブりな朧月

おれは今真夜中の公園でベンチで寝っ転がっている。
これからあと30分後くらいにスタジオのリハーサルが始まる。

なんか他にするべきことがあるんじゃないかと思いながら歩き始めた。公園の池は夜で真っ黒だ。星もみえない曇りの夜だ。

ずっとポジティブでいるのは難しいし気持ち悪い。
だからたまに夜中に寝っ転がって、外気を呼吸して、なんか違うなって思って歩き出すとちょっと違う気分になって、別に前向きじゃないんだけど歩こうかなって思って歩いているよ。
 
 
 

★▼▼▼▼▼▼$$$$▼


 
 

 今日、密漁を誘われた。
 前から誘われていたんだが、夏が近づいてきて本格的に密漁の季節なんだって。
 何かの例え話じゃないよ。本当の密漁だ。アワビとかサザエを盗るんだって。

 海で遊ぶふりをして、密漁をすることを想像したら笑ってしまった。

 密漁は悪いことだ。でもすごく魅力的に感じる。
犯罪を犯すと、高揚感と不安感の狭間でふわふわした浮遊感を味わう。
そういったことは憂鬱な精神の安定に役立つ。

少年が犯罪を犯したくなる気持ちってそんなことじゃないか?

憂鬱な精神の安定に役に立つのは、働くことだ。働くとメンヘラが治るって言ってるのを聴いたことがある。似たようなものだ。

働いているのと犯罪を犯しているのは程度の違いこそあれど、なにか根本的な人間の社会にコミットしようとする活動として、大して変わらないと思うんだ。


かつて危険な植物を育てている農家さんのお家にお邪魔したときそう思った。
農家さんはとても熱心に植物を育て、乾かし、小分けにパックしていた。

素晴らしい職人の手つきだった。惚れ惚れしたよ。

おれもなにか手伝うよ。
そう言ったら農家さんは

「いいんだNG。そこにいて見てろ」

と言った。

 あの夜を思い出した。


 素晴らしい夜もある。

 愛に溢れてこんな幸せな気持ちがあったのかって見つけることができるような。


 大抵はいつも逆だ。

 美しかったり素晴らしいことを求めすぎてしまって、ヒドイ憂鬱に襲われたり。


 毎晩素晴らしくなくていいよ、ひんやりした夜の窓やベンチに身を寄せて、じっとしていたい。

誰かに何かを言いたいときもある。

そういうときにこのblogを書くことにした。

 例えばこういう中途半端でムダに長い文を誰かに伝える方法が、却って現代には少ないし、誰もがこんな長さの気持ちは誰にも伝えられなかったり、やり場がなかったりしてるようにも思う。

そういうときに酒場や酒が機能しているようにも思うけど。

 おれは真夜中の公園の夜を映している池に、石を投げ込む感じで中途半端な気分を反映させている。

スペースデブリな朧月夜。

無用、不要ということが美しいこともある。

さあ、音楽の練習の時間だ。

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2016年5月18日 (水)

呼吸するダクトの暗闇をまさぐりながら

 一日中バイトして終電車で家まで帰る。

 何かをやり忘れたような気がする。

おれはバイトをしてて一番好きな時は、最後に店を締めるときにドデカイごみ袋を外のダストボックスに捨てるとき。

ダストボックスの蓋を開けるときだ。

今日が終わって、自分自身の時間が始まるから。

室外機とかダストボックスとか好きなんだよ。

 でもこの話は前にも書いたような気がするな。

今日は雨も降って大してお客さんは来なかった。

最後終わり間際に、かつて働いていたMさんがバイクに乗ってやってきた。

Mさんはうちのレストランを辞めたあと、エアコンのフィルターの清掃の仕事をやっているんだって。楽しそうだな。

閉店後、Mさんとヴァンパイアホストの店長、アメリカ人狩りの料理長とエアコンのフィルターを取り外して修理を始めた。

店舗用のでかいエアコンのフィルターを外して中を覗きこんでゾッとした。

天井からどこまで続いてるのかと疑りたくなるくらい大きなダクトの穴があった。
それは全くの暗闇で。

大きな暗闇の穴が冷たく生臭い空気を吐き出したり吸ったりしていやがる。

 おれはハアハアいった。こういうときにアルバイト面してるのが難しい。

いいか?わかるかい?

①大きな穴のあいた暗闇が

②生臭い冷気を

③呼吸している

④人工物のなかで

 
という自分の決定的な好みの条件が揃っているのだった。

今書いてて気づいたけど、おれは②の「生臭い冷気」が好きな性癖をもってると自分でも初めて知ったよ。

 そしてあろうことかMさんは(既婚者二児の母)は真夜中に作業着を着て、その暗闇の穴に手を伸ばした。まさにプロのエンジニアの手つきだ。

「あー、ダメですね。壊れてる。全部吸い込まれちゃうやつです」


なんだって?!?!?ー?!?

おれはハアハアいった。


①女性が作業着で

②プロっぽい手つきで

③機械をまさぐって

④暗闇を診断して

⑤全部吸い込まれちゃう

⑥ダメですね

 気絶しそうなくらいヤバイシチュエーションだけど、君にはわかるかな

おれ自身もうまく説明できないよ。


 でも、好きなんだ。

 好きになることに理由なんてない。

 自分が感じたり、愛したことをありのままに伝えようと思うんだ。冗談じゃなくてさ、きっとわかってくれる人がいる。

わかってくれなくてもいいよ。

 ただ、いつだって、想像できないような場所から魅力的な現在は顔を出すんだ。
その時に君のことが好きだって心から想う、その気持ちを忘れたりはしないよ。


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2016年5月16日 (月)

地震てなんなんだい

 曲を作ってた。だんだんできてきて、歌詞が変わってきて、やった!やっとできた!!!!と思ったところで地震が来た。

 おれん家はめちゃくちゃ揺れたんだ。川沿いだからか?五階だしな。

曲がなんとなくできた興奮と地震の揺れでワケわからなくなってしまって、とりあえずトイレで小便をした。何もかもが揺れていた。ゆらゆら。

 とりあえず曲作りを中断して外に出ようと思った。街に出ると、人々はザワザワしつつも平然顔だった。おい、大したことなかったのかい?


とりあえず夜更けに行ってみた。夜更けの人々は平然顔で酒を飲んでいた。おい、なんもなかったのかい?おれは平然を装って座ったが内心興奮していた。それが地震によるものなのか、曲ができてきたことによるものなのか、もうわからなくなったきた。

 常連のシャイニーが近寄ってきて「NG、今夜は奢るよ」と言ったきた。シャイニーには貸しがあるんだ。でもおれはまったくもって奢られたいような気分ではなかったが、まあ、いいかと思って素直に2杯ハイボールを飲んだ。

なんなんだ?今夜は変な気分だ。

 オバチンが来て

「ねえ、これ見て」

と写真を見せてきた。オバチンが金髪だった頃の写真だ。サイヤ人みたいだったが、そうは言わなかった。

「似合ってるね」

「でしょ!?もういいわー!!!」


何がもういいかわからなかったが、特に返答はしなかった。

おれは変な気分だった。

 おれはさっきまで、地震に関する曲を作っていたんだ。

今ここが現実なのか非現実なのかわからなくなっていた。


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2016年5月14日 (土)

ザンパノの道

昨晩、馨子に会った。

 フリージャズ(?)バンドのOMJQの集まりだったんだけど、ピアノのワカメが馨子を呼んでいたんだ。

馨子と会うのはzampanoの最後の脱退のライブ以来だった。
正直ちょっと、いや、かなり、 ギクシャクしたけど、少しだけ話すことができた。

 酒田の乞食の兄貴たちの話や、秋田の山影のキョーダイの話、毎朝枕元に立ってたビリケンさん、鎧のヒデカズさんが一触即発で乱入してきたこと、16%のかおりんがイージー&イージーを歌ってくれたこと、ジョニーのこと。

あんまり多くは話せなかった。馨子は少しだけ笑って聞いていた。


これから長い別れになる。

話すことができてよかった。

さよならだけが人生じゃないけど、というやつだ。


+▼+▼+▼+▼+▼+▼▼★▼★

 終電で浅草橋に帰ってきて、「夜更けの人々」に行った。夜更けにはDがいた。
Dは三年前の蔵前で起こった事件の夜に、事件の直前まで飲んでいた、それ以来だったように思う。Dはおれのことを覚えていなかった。
おれは髪を染めたし、覚えていないのも無理はないかもしれない。
嫌な事件の時の記憶だから、忘れた方がいいのかもしれない。


 その日はバーテンダーのOの誕生日だった。Oは自分の誕生日の13日の金曜日の誕生日には必ず悪い事件が起こる、と笑っていた。

「事件は起こった?」

「いや、そういえば何もなかったな」

おれは、おめでとうと言ってOにプレゼントを渡した。

 キップ・ハンラハンがプロデュースしたアルゼンチンタンゴのアストル・ピアソラがかかった。
「タンゲッティア」という陰気な嘲笑から合唱に変わる1曲目は夜更けの人々にピッタリな気がした。 

 飲んでいると夜半過ぎに、夜更けの隣にあるカフェの女が来た。

 カフェの女は従業員の面接の時必ず好きな映画を訊くんだそうだ。


 おれにも面接のように好きな映画を訊いてくれた。


「フェリーニの道という映画です。ザンパノという旅芸人が、ジェルソミーナというイタリアの田舎の貧農の娘を買って、旅に出る映画で。
ザンパノというムサ苦しいオッサンは街の往来で鎖を引きちぎるどうしようもない芸をやるのね。
ジェルソミーナはザンパノの芸が始まる前にトランペットや歌で出囃子をやるんだよ。
「Arrivato Zampano!」ザンパノが来たよって。

ザンパノはうまくやれないジェルソミーナを鞭打ったり暴力をふるって無理矢理従わせるんだけど、ザンパノの芸を観に来た人たちは、だんだんジェルソミーナの歌の美しさに気づいて人気が出てくるのね。

でもザンパノはそんなことにかまっちゃいないで、酒を呑んだくれて、ジェルソミーナに言い寄ってくる男を撲殺したりして。

そんなとんでもなく乱暴な旅をしているたうちにジェルソミーナは死んでしまうんだ。

ジェルソミーナがいなくなって、よぼよぼになったザンパノは、ふとした瞬間にかつてジェルソミーナが歌っていた同じメロディーを聴く。

そしてザンパノは号泣する。そこで映画は終わり。」

 カフェの女は映画のあらすじを聞いて

「その映画を観たら一週間くらい落ち込みそうですね」

と言った。

Oは「これが面接なら」と言って笑っていた。

 

 
「NGはクビだな」


●*++++++▼★▼▼
 
 ソロツアーで行った酒田の打ち上げでも好きな映画を訊かれたことがある。そのときにも道の話をしたような気がする。
 
 乞食のギターのシン兄は「バックトゥザフューチャー」と言っていた。

シン兄の答えが好きだ。おれみたいに面倒そうな答えをする奴は手に負えないからな。


 おれはひとりになっても鎖をちぎる芸を続けるつもりだ。

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2016年5月13日 (金)

サンダルを投げ出して裸足で眠る女の薬指

 昨日の朝起きてからもうすぐ24時間が経つ。

朝陽の中にいると吐きそうだ。

また中央線を乗り過ごして、まちがって神田まで来てしまった。

 サンダルを投げ出して、シートに横になって眠っている女がいる。
裸足で、赤いペディキュアをしていて、薬指を怪我していた。

 朝の電車の中では、誰もがその女のことを愚か者を見る目で見ている。わりかし美人だったけど。おれはお茶の水で乗り換えた。

 乗り換えるときにお茶の水の堀から流れる神田川が見える。

真緑をしている。

夜見ても朝見ても濁っているのがわかる。
濁った川から隅田川へ、そして東京湾に流れ込む途中におれの家はある。

徹夜で練習しているとこの時間に腹が減って困るんだよ。前の晩に何時に飯を食おうが腹が減る。


まだ通勤ラッシュは始まっていない。

スーツ姿や学生服から見れば、ギターのハードケースを持ったまま眠るような男は、サンダル投げ出したままシートで眠る女よりも邪魔っ気かもしれない。


★★★


 和歌山と大阪の驢馬のライブで、おれのガットギターはブチ壊れた。godinの方だ。
元々調子はおかしかったからなんとなく予感はしていた。1弦だけ音が出ないんだ。ピエゾピックアップがイカれたのかもな。

予感がしていたから、ツアーにはもう一本ガットギターを持っていった。スペイン製のzamapanoでお馴染みに使っていた奴だ。

こいつはよく鳴るんだが、鳴りすぎて驢馬ではハウってしまう。周りの音をサウンドホールから吸い込むように。

カツヤさんのベースの低温は言わずもがな、壺ニャンの声も飲み込んでリバーブに巻いてしまうんだ。

いつもドライで吐き捨てられる壺ニャンの声が、おれのガットギターを通してびしょびしょに残響がかってしまうのは面白いけど不本意だ。

 ライブは五月もある。やっと東京で。

それまでにおれはギターをなんとかしなけりゃいけない。


▼+▼++▼▼+▼▼


 家にたどり着く途中、橋の上で狂った感じの老人が空に話しかけている。  

 ゴミ捨て場にはでかいスーツケースが捨ててある。なんとなく不気味だ。

 こんな文章を読んでおもしろいかい?

 腹が減った。どこかに何かを忘れてきたような気がする。

ライターを毎日なくすように不毛な朝を歩いてちゃダメだ。

だけどおれは会社勤めのスーツや、女子高生みたいには朝の中を歩くことはできない。

まだ昨日が終わっていないからな。

満員電車のなかで裸足で眠るような人間の気分の方がわかる気がする。


こんなメールをともだちに出したりはしないよな。


 


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2016年5月12日 (木)

ゴールの見えない夢

 空港のゲートを過ぎた飛行機搭乗口までの傾斜がかった道を何て言うんだろう?

 あの道でおれたちはバスケットボールをしていた。戦法はラン&ガンだ。すべての試合をそうやって戦ってきたから。ターンノーバーして最初のパスを遠くまで投げた。
 全員が走った。パスは景気よく繋がっていく。おれの役目はゴール下に辿り着いてポジションを確保すること。スクリーンアウトだ。パスもシュートも下手だったが、スクリーンアウトとリバウンドだけはできた。今でもそれはあんまり変わっていないと思う。

 ポイントガードが3ポイントシュートを撃った。それはリングに弾かれて入らなかった。おれはリバウンドした。
ここからだ。ここからがおれの仕事だ。

 だが、さっきまであったゴールはどこにも見当たらなかった。虚空には暗闇が広がっている。もう一度、走り始めた。どこにもゴールは見えない。だが、チームメイトが並走しているのが視界に入るとそれほどの不安感はなかった。

全然、まだ走れる。
問題はゴールがみえないことだ。ついでに言えば飛行機の搭乗時刻も迫っていた。
 

★★★

 午前8時頃に目が醒めた。

 さっきまで観ていたのは夢だと、途中から薄々わかっていた。

夢が暗示しようとしていることも、半覚醒の状態でもわかるようなシンプルでストレートな意味だと思う。


 部屋はめちゃくちゃだ。ツアーから帰ってきた機材を適当にぶちこんだからだ。

夜中帰ってきて、窓を全開にして寝たから5月の強い風がビュービュー入りこんでおれの部屋を洗っている。

風のなかで睡っているような、気持ちいい朝だった。


 また出勤だ。クソが。


▼▼▼


 おれはblogの書き方を少し変えようと思う。
ともだちにメールを書くくらいの気分で少しだけでも送ろうと考えている。

 ともだちへのメールはすごく短い。もう少し敬意や愛想を込めるべきかなとは自分でも思うよ。

突然メンヘラ的に長くなったり、躁鬱で短くなってしまっても気にしないでほしい。いつものことだって。


▼▼▼


ライブ告知の仕方は難しいよな。
それでもライブ観に来てくれる人のために、なんか書くべきだよな。

マジで、ありがとう。

今、驢馬とソロをやってるけど、どっちも観てほしいな。

5/20(金) NGバルバロイ 大塚meets
5/28(土) 驢馬 青山Red Shoes
5/29(日) NGバルバロイ、川合啓介 夜更けの人々(昼間のイベントです詳細TBA)

6/4(土) 驢馬 両国SUNRIZE
6/8(日) 驢馬 渋谷CYCLONE

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