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2016年12月 9日 (金)

木曜日の深夜から

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朝の五時だ。今さっき驢馬の深夜練習が終わった。

12月の朝、東京でももうそろろ寒くなってきて冬の朝って感じがするよ。


おれたちは五年間、毎週毎週木曜日の深夜にスタジオに入っていた。


最初は池ノ上だったな。あのスタジオはよく覚えているよ。駅からスタジオの坂道が長いんだ。


 朝陽が徹夜のバンドマンのショボくれ眼を眩しく照らす中で、
長い坂道を楽器背負って歩きながら全然意味のない会話をして歩いたこともあったよ。

 驢馬始めたばっかりのころ、あの駅までの坂道でハカランダおじさんに出会った。

おじさんは「おまえはどんなギターを使っているんだ?」と言うから「ガットギターです」と答えたら「わたしの家の庭にはハカランダの樹が植わっているんだ、観ていきなさい」と言って豪奢な家の塀越しに庭に植わっている樹を見せられたっけ。


 壺にゃんは絶対興味ないはずなのに、多分眠すぎてぼんやり樹を眺めているし、

カツヤさんはこの世のことをあの世くらい面白がって観てるからハカランダおじさんの会話に驚きと感動をもって答えていた。

おれはというとハカランダがなんのことかわからなかったな。

壱さんはもちろん既に帰っていたし、

joseはあのときどうしていたんだろう。覚えていない。


おじさんはちょっと狂っていて、あの豪華な家はおじさんの家じゃなかったのかもしれないし、

今となってはハカランダおじさんにあったことも夢だったのかもしれない。

ぼんやりとしか思い出せないな。でも、奇妙なムードに満ちた朝でこんな気持ちになったことは覚えてるし事実なんだ。
 
 
 
    §§§
 
 
 
 悪いけど、このblogには驢馬が解散する理由は出てこないよ。ただ今、どんな感じか伝えたかったんだ。
あと、今、書くことがあるような感じがした。またしばらく間が空いちまったもんな。連絡しないですまなかったよ。
 
 
 
     §
 
 
 

 三年目くらいから池ノ上の長い坂を歩くのをやめて、吉祥寺のスタジオに入るようになったよ。
吉祥寺のスタジオは駅から近くて助かった。
あと、スタジオの店員がいつもワイワイしてて会話が楽しかったな。
あんまりメンバーの会話が無かったときもうまい具合にホッとさせてくれたよ。
こういうことって、些細だけど大事だよな。


 そんでも朝、やっぱり一人になって帰るとき、なんかすごい気持ちになるのさ。

驢馬の解散が決まってから、木曜日の深夜練習をやっていなかった。今日は久しぶりに入ったんだ。だから思い出したよ。


 冬の朝に投げ出されて、始発のこれから出かける人たちに交じって楽器を担いで帰る。


 なんか、感じることがあるよ。過去にもこのタイミングで書いたことたくさんあるよ。


 おれたちの音楽はこういう静かな朝と一緒に育まれていった。

誰もいない商店街とか、車の来ない横断歩道でカチカチ点滅している信号なんかを観て思い出したんだ。

 例えば、旅に行くだろ。旅先でバンドで演奏して、夜中の打ち上げに少し顔を出して、日付が変わる頃に次の街に出発する。

田舎ではそんな時間に人間がいることは稀さ。誰もいない交差点や、自動販売機が佇んでいる世界を通りすぎながら行く。

 無人の夜の情景がイマジネーションをたくさん生んだよ。だからみんなで行くバンドの旅がすげえ好きだったのさ。


 今朝、今さら気づいたが、東京でもおれたちが朝まで練習やって、午前五時頃帰るときの誰もいない雰囲気は旅と同じくらいイマジナティブでよかったんだ。

あんまりわかっていなかったな。

全然普通の、繰り返し繰り返してる朝がインスピレーションと力をくれた。そうやって驢馬は育っていったんだと思った。
 
 

あと二回で驢馬は終わる。

 
五人の男が五年間ツラ突き合わせて、夜と朝の間に作った音楽だ。

最高の演奏で届けようと思っている。
 

五人が全員そう思っているよ。


 
 
 

 
 


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