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2016年11月13日 (日)

world traveler

instagramってやってるかい?

おれはどのSNSやったって頻繁に更新したりいきなりパッタリやめたりして、学ばない野郎だ。

 おれの挙げる写真は演奏旅行中の写真が多い。非日常めいてるときの写真ばっかさ。ニュースサイトをだらだら観てたらinstagramの嫌われるユーザーの例でworld travelerというタイプが出ていた。world travelerはリゾートバカンスや世界の名所の写真ばかりinstagramに投稿して、日常の自分の写真は全然あげねえんだと。instagramの使い方わかってねえ、寒いやつだって嫌われるらしいぜ。

 おれのinstagram がツアー中の写真ばっかりなのは正にworld travelerじゃねえかって思って落胆したよ。

 もっとマシな奴でいてえなって思って、最近撮った写真探してみてたらさ、データにあるのはレコーディング中の写真とか、バイト先で撮影した本日のパスタとか、ネット上に晒しちゃいけねえようなデータばかりでツマンネエ毎日送ってやがんなと思った。

 とりあえず二枚だけ久しぶりにあげてみたよ。職場とか左右田さんには黙っててくれよな。内緒だよ。

あげ茄子のトマトソース

ngbarbaroiさん(@n.g.barbaroi)が投稿した写真 -

2016 11月 12 6:14午前 PST

 でさ、instagram観てたら、昔の知り合いが「知り合いかも?」みてえな機能でユーザーアカウント表示されたんだ。

あれってすげえよけいな機能だと思わないか?

 確かに友達さ。でも人間を何年かやってるともう二度と会いたくないような友達もできるんだぜ。極左の前衛美術家とかさ。

 あの余計なお節介機能で「友達かも?」って昔のおれのバンド仲間が表示された。アカウント名がアフリカの議長と無政府主義を併せた悪意ある名前だから間違いないさ。誰のことだかわかったやつもいると思う。本人には言うなよ。

 そのアフリカ無政府主義者とは仲違いした訳じゃねえんだけど、あいつが別のおれの地元の親友と大喧嘩しちまったから、なんとなくおれも疎遠になっていた。

 風の噂では、子どもが生まれたって聞いてた。

 あいつに子どもが!って思ったよ。

 だってなあ、あいつはブコウスキーどころかバロウズまで全部読んでるようなやつだ。クレイジーと思わないか?

おれたちの中のいったい何人がバロウズを頭からケツまでバロウズを読みきったんだい?おれもバロウズ持ってるけど全部読みきったことがあるのは裸のランチだけだよ。あれはとっても大変な体験だった。 

 テクノのジェフミルズだったりセオパリッシュとかさ、フリージャズってかサン・ラが好きで、クリストやデュシャンやダダイズムの美術を愛してるやつだった。一緒に美術館に行ったり、レコードを掘りに行ったりしたよ。

 とにかく超先鋭的な感覚の持ち主なんだ。

 最後の頃はムーンドッグのレコードをかけながら「もうNGにはわかんないかもしれないな」って言われたこともあったな。あのムーンドッグのアナログ買ったよ。ムーンドッグな、やばいよな。

 中学生の頃からあいつとはつるんでて一緒に遊んでたけど、おれらが遊んでた最後のころは、お互いの家に行って、買ったきたレコードを二人で聴いたりしてただけだった。

 とにかくバンドやめてからのあいつはヴィンテージ機材の要塞を築いて宇宙のようなトラックを作ってたよ。あいつの書く文章も絵も素晴らしかった。昭和の漫画と現代美術がそのまま融合した画風だったさ。

恐ろしいレコードと、本のコレクションを持っていた。とにかくおれにとっては先生だったのさ。

 あいつが子どもが産まれたって噂で聞いて、きっと音楽を辞めちまうんじゃないかって思ってた。

 だってさ、あのコレクションと要塞を維持するのはむちゃくちゃ大変で、言っちゃえばバンドやるより大変な話だからな。勝手な想像だけど、また音楽を創ってる友達が一人減ったんじゃないかって、哀しんでたんだよ。

 

 だけど違った。

ネット上で再会したあいつのinstagramに出てきたギャラリーには、相変わらずの惚れ惚れする音楽の要塞の画像が沢山あったんだ。音楽辞めたと思ったのは、まったくおれの自分勝手な思い込みだったんだ。

MPC60、TR707、MS10、nordの鍵盤、mackeyのミキサー、二人で曳舟のヤク中から買い取りに行ったKP2、音のぶっといRODECのテクノミキサー。それだけじゃない。ミキサーの前にはフェーダーを弄る小さな子どもの写真があったんだ。

わかるかい?おれはブッ飛んだ。

感動したんだ。あいつの子どもがミキサーと一緒に映ってやがる!!

 おれはてっきり家庭を持ったり、子どもが生まれたら、音楽を手放さなきゃならないと思ってたんだ。普通の人間にならなくちゃいけないってさ。

 バンドやっても粋がってるだけでリアリティーねえ感覚の持ち主なんだよ。音楽を手放せるのか?いったいどうやって?

おれたちが、何があってもどこかに戻れるわけなんかないんだ。進むだけさ、

 アフリカの無政府主義者は狂ってる。あいつは自分の子どもに自分の音楽を聞かせてるに違いない。サン・ラを、ブラックジャズを、あいつ自身の作った毒性の高いトラックを聴かせてるに違いない。

あいつが音楽をやめるわけなんか無かったんだ。あの要塞の中で子供と遊んでる。子ども育てながらトマス・ピンチョン読んでやがる。表紙をインスタにあげてやがる。ちゃんと読んでんだなって思った。「重力が衰えるとき」っていう未来イスラム探偵SF小説を教えてくれたのもあいつだったよ。

もしかして最低かもしれないが、SF読むより、トラック作るより、悪いことも世の中にあるぜ。それよかおれたちが信じてきた音楽や文化はムチャクチャにピースだよ。

人をダメにするかもしれないけど、人を救うことだってあるんだ。少なくとも、おれやあいつにとってはそうだ。

 おい、バンドやって音楽やってるような面してる奴が何人トマス・ピンチョン読んでるんだ?バイトバイトバンドバンドで本なんか読んでねえだろ。おれだってチョンピン読んでなかったよ。

 おれはあいつのinstagram見ただけで、負けたと思ったし、やる気になったぜ。

 面白くねえ人生なんてクソだ。

 おれたちは誰も読まないような本を読んで、誰も聞かないような音楽を聴いて、とんでもねえ音楽を作って、情熱をもって、独自のやり方で幸せになろうぜ。

 おれはworld travelerを辞めることにした。

 全然特別じゃねえ、今、この時から発信していくからな。

これからもよろしく頼むよ。

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