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2016年5月14日 (土)

ザンパノの道

昨晩、馨子に会った。

 フリージャズ(?)バンドのOMJQの集まりだったんだけど、ピアノのワカメが馨子を呼んでいたんだ。

馨子と会うのはzampanoの最後の脱退のライブ以来だった。
正直ちょっと、いや、かなり、 ギクシャクしたけど、少しだけ話すことができた。

 酒田の乞食の兄貴たちの話や、秋田の山影のキョーダイの話、毎朝枕元に立ってたビリケンさん、鎧のヒデカズさんが一触即発で乱入してきたこと、16%のかおりんがイージー&イージーを歌ってくれたこと、ジョニーのこと。

あんまり多くは話せなかった。馨子は少しだけ笑って聞いていた。


これから長い別れになる。

話すことができてよかった。

さよならだけが人生じゃないけど、というやつだ。


+▼+▼+▼+▼+▼+▼▼★▼★

 終電で浅草橋に帰ってきて、「夜更けの人々」に行った。夜更けにはDがいた。
Dは三年前の蔵前で起こった事件の夜に、事件の直前まで飲んでいた、それ以来だったように思う。Dはおれのことを覚えていなかった。
おれは髪を染めたし、覚えていないのも無理はないかもしれない。
嫌な事件の時の記憶だから、忘れた方がいいのかもしれない。


 その日はバーテンダーのOの誕生日だった。Oは自分の誕生日の13日の金曜日の誕生日には必ず悪い事件が起こる、と笑っていた。

「事件は起こった?」

「いや、そういえば何もなかったな」

おれは、おめでとうと言ってOにプレゼントを渡した。

 キップ・ハンラハンがプロデュースしたアルゼンチンタンゴのアストル・ピアソラがかかった。
「タンゲッティア」という陰気な嘲笑から合唱に変わる1曲目は夜更けの人々にピッタリな気がした。 

 飲んでいると夜半過ぎに、夜更けの隣にあるカフェの女が来た。

 カフェの女は従業員の面接の時必ず好きな映画を訊くんだそうだ。


 おれにも面接のように好きな映画を訊いてくれた。


「フェリーニの道という映画です。ザンパノという旅芸人が、ジェルソミーナというイタリアの田舎の貧農の娘を買って、旅に出る映画で。
ザンパノというムサ苦しいオッサンは街の往来で鎖を引きちぎるどうしようもない芸をやるのね。
ジェルソミーナはザンパノの芸が始まる前にトランペットや歌で出囃子をやるんだよ。
「Arrivato Zampano!」ザンパノが来たよって。

ザンパノはうまくやれないジェルソミーナを鞭打ったり暴力をふるって無理矢理従わせるんだけど、ザンパノの芸を観に来た人たちは、だんだんジェルソミーナの歌の美しさに気づいて人気が出てくるのね。

でもザンパノはそんなことにかまっちゃいないで、酒を呑んだくれて、ジェルソミーナに言い寄ってくる男を撲殺したりして。

そんなとんでもなく乱暴な旅をしているたうちにジェルソミーナは死んでしまうんだ。

ジェルソミーナがいなくなって、よぼよぼになったザンパノは、ふとした瞬間にかつてジェルソミーナが歌っていた同じメロディーを聴く。

そしてザンパノは号泣する。そこで映画は終わり。」

 カフェの女は映画のあらすじを聞いて

「その映画を観たら一週間くらい落ち込みそうですね」

と言った。

Oは「これが面接なら」と言って笑っていた。

 

 
「NGはクビだな」


●*++++++▼★▼▼
 
 ソロツアーで行った酒田の打ち上げでも好きな映画を訊かれたことがある。そのときにも道の話をしたような気がする。
 
 乞食のギターのシン兄は「バックトゥザフューチャー」と言っていた。

シン兄の答えが好きだ。おれみたいに面倒そうな答えをする奴は手に負えないからな。


 おれはひとりになっても鎖をちぎる芸を続けるつもりだ。

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