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2016年5月28日 (土)

楽しい日曜日の過ごし方

「NG、全然ダメだよ。きっとわからないし、伝わらない」
 
 監督は昼飯を食べながら言った。おれと監督は今、暇そうな女ばかりが集まる千駄ヶ谷のクソお洒落なカフェでランチしている。
 
「何がだい?あんなblogを書くべきじゃなかったって言いたいのかい?」
 
「そのこともそうだけど、その話じゃない。
今週末日曜のイベントのことだよ。あれは一体何をやろうとしてるんだ?告知のタイミングも悪いし、内容も不明瞭だ、しかもおれに招待が来てないし」
 
「うそ、招待してなかったっけ?」

「どんなことやるのか、なんにもわからない。真っ暗だよ。」
 
「いいんだ、"真昼の夜更け"なんだから。今、招待を送ったよ」
 
ランチプレートがやってきた。おれはアジフライだった。監督は鶏だった。

「おれたちは良い演奏をできるように用意している。EPPAIさんは絶対に最高だ。本物のパンクスと大道芸人が融合したようなとんでもないスタイルでストリートを廻ってる。なんの心配もない」
 
「そんなこと聞いてるんじゃないよ、内容の心配をしてるんじゃない。君らがどんな良い演奏をしても、ステージも何もない路上だ。人が集まっても、すごく良いものがプレゼンテーションできても、音楽の印象はきっと霧散してしまって、どこかに消えてしまう。君たちはそれでいいの?」
 
監督は不服そうに言った。おれはアジフライを半分あげた。
 
「旨いぜ。おれはアジフライが大好きだ」

 
「せめて後ろのシャッターの壁に磁石で布を張ったり、ステージみたいなものを作るとかさ、」
 
「いいんだ、監督。ありがとう。」
監督の言葉を遮って言った。
 
「今回、おれとOが夜更けでやろうとしてることは先物取引や闇市みたいなものなんだ。
それを街のイベントに訪れた人たちが観れるような場所で見学できるようにやろうとしている。築地に外国人の観光客が集まるだろ?
アヴァンギャルドな大道芸の先物取引市場を公開する気でいるんだ。
いきなり見せて、普通の人にはちょっとハードルが高いかもしれないけどね、おれが期待しているのは影響力を持ったオーガナイザーやインフルエンサーに印象づけること。
この街のやつらに夜更けには面白いものがあることを思い知らせること。
 クローズドな雰囲気はしかたない。本来は先物取引だから秘密裏に行われる類いのものを限定公開するんだ。
闇市だからなんの許可もとってないし、誰がやってるのか不明瞭で、それでいいんだ。
 だから真昼の夜更けというタイトルにした。」
 
「ふーん、先物取引というアイデアは面白いね。
でもやっぱりわかりづらい。それに後から「あれはああだった、こうだった」という理屈をつけるのは誰にだってできるよ。
先に言うべきだね。誰でもアクセスできるようにインフォメーションをちゃんとやるべきだ。
そして、みんなが受け止められるような土壌や環境を作らなきゃ。もったいないよ。わかられないことは」
 
「言ってることはわかるよ。
 でもさ、だから監督は隣の店から観れるようにベンチをつくってくれたんだろ?」


「ちげーよ」


監督はケーキを食べたそうだった。
 
「きっと、楽しい日曜日になる。監督、ケーキでも食べよう」
 
「え?!ケーキ食べんの?NG金もってないじゃん」
 
「おれたちの成功を祈って、監督のおごりで食べよう」
 


監督の言ってることは正論だ。おれの「先物取引」はどうも分が悪いけど、しかも話は終わっていないけれど、監督とおれは一緒にケーキを食べることにした。

「監督、はやく決めなよ。おれはフォンダン・ショコラだ」


監督はケーキのメニューを見ながら楽しそうに悩んでいる。おれはカマボコ板で彼の写真を撮った。
 
「おい、NG。勝手にSNSに上げるなよ」
 
「どうかな。今週末は楽しい日曜日にしようぜ」
 


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 5/29(日)昼12時~
"真昼の夜更け"
 日曜日の真っ昼間から、蔵前のバー「夜更けの人々」の外でバスキング!!超強力ギグを行います。
最強バスキング王EPPAI(フィドル、オルガン、指マラカス、ベル、カスタネット、スプラッシュ、カウベル、スネア、鈴、カズー、歌)と、不逞の輩NG(ガットギター)、見た目はスクエアなインプロヴァイザー川合啓介(サックス)による、正午からの凶宴!夜更けの人々らしいえげつない楽しい日曜日をあなたに!
(お店の中ではzaculoも販売しています)

出演
EPPAI (バスキング)
NG(ガットギター)×川合啓介(アルトサックス)

zaculo (アクセサリー&古着)

観覧:投げ銭

〒111-0053
東京都台東区浅草橋3丁目24 東京都台東区浅草橋3-24-7 1F


 

 

 

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2016年5月26日 (木)

真昼の夜更け

 次の日曜日にまっ昼間から、蔵前のバー「夜更けの人々」の外で路上演奏をすることになった。
メンバーはおれのガットギターと川合のサックスで、このデュオは福島のバー"Black Comet Club"でやったときにいい感じだったから、今回Oに相談してもう一度川合と共演することにした。

 対バンは一組だけ。EPPAIさんだ。
EPPAIさんはAnAn-POGAのフィドルとボーカルをやってる人なんだけど、一人で演奏をするときは、フィドル、オルガン、指マラカス、ベル、カスタネット、スプラッシュ、カウベル、スネア、鈴、カズー、歌を全部いちどきに独りで演奏するんだって。凄まじいよ。サイヤ人と大道芸人が融合したような人だから、夜更けの昼間にぴったりだと思うんだよ。

 そんなわけでおれは川合と、家の近所の墨田川でこないだ練習してた。
どうせだから川っぺりの総武線の高架下で練習しようっつってやったんだけどさ、練習してる度に頭の上を電車が「ガタンゴトン!ガタンゴトン!ガタンゴトン!」って爆音で通っていくのな。閉口したよ。

実際にはガタンゴトン!なんてもんじゃなくて、

グガトバゴン!!ンゴンゴンゴガガガ!!!ズガドゴンズガドゴン!!ンゴンゴンゴガガガ!!!!グガトバゴングガトバゴン!!!ギガンギガンガンガ!!!

っていう音だった。

この音を聴くだけで、我々の音楽の貧弱さと想像力の無さを痛いほど思い知るよな。

鍛えられるよ。暫くは高架下で練習しようと思う。


当日は12時頃から夕方までライブやろうと思う。

バスキングって知ってる?帽子回して投げ銭入れてもらうスタイルらしいんだけど、みんな有り金全部いれてくれよな!


5/29(日)昼12時~
"真昼の夜更け"
 日曜日の真っ昼間から、夜更けの人々の外でバスキング!!超強力ギグを行います。
最強バスキング王EPPAI(フィドル、オルガン、指マラカス、ベル、カスタネット、スプラッシュ、カウベル、スネア、鈴、カズー、歌)と、不逞の輩NG(ガットギター)、見た目はスクエアなインプロヴァイザー川合啓介(サックス)による、正午からの凶宴!夜更けの人々らしいえげつない楽しい日曜日をあなたに!
(お店の中ではzaculoも販売しています)

出演
EPPAI
NG×川合啓介

観覧:投げ銭

〒111-0053
東京都台東区浅草橋3丁目24 東京都台東区浅草橋3-24-7 1F

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2016年5月24日 (火)

誰もいないドッグラン

「君は彼女に謝ると言ったな。
おれはオカシイと思っていたよ。君が謝るんだったら、おれは君に対して怒ろうと思った。その予定だったからな。へらへらして謝るはずじゃなかったのか?」
 
「そんなこと言っていたっけ?おれは。本心で謝る気がなかったからな。眠かったし謝りそびれたよ」
 
「結果的にはおれが誰に対して言っているかわからない宣戦布告を宣言して、眠そうな君と、君の嫁さんと彼女が付き合わされたようなものだ。おれが本当に謝るのか?って聞いたときあそこで君が謝らなかったから吃驚したよ、何のために集まったかわからない」
 
「君のあんな話はいつもここでしてるし、君はいつもそうじゃないか。
おい、もう一時を廻ったな。店を閉めよう、この糞みたいな店を。店じゃないけど」
 
「額縁な」
 
おれたちは外に行って、額縁の外のシャッターを下ろした。

五月というのに馬鹿みたいに暑かったが夜更けになると少しだけ涼しい風が吹いてきた。隣の店は閉まっている。それをなんとなく寂しい気持ちで眺めるおれはどうかしてると自分でも思うよ。

 

「なんにせよ」

もう相当この話題に飽きてきているはずの彼は少し矛先を変えた。

「君はしっかり仕事をしなくてはいけない。バイトでもいいんだが、そういうことじゃなくて自分自身のための仕事だ。当たり前だが、まず食うことだからな」
 
「正直言って、今のおれは本業のパスが素晴らしく無くなってしまった。
前までは底辺に這いつくばっていてもまだ仕事はあったんだが、本気でヤバイよ。何もない。練習して曲を作っているが、その時間も削ってバイトに精を出すしかない状況なのに、呑気に窓の外を見てる」
 
「まあ、自暴自棄になってないならいいんだ。ただ君は女に振り回される質を持っているからな、それはダメだ。」
 
いちいち耳障りなことを言う友人を持ったものだ。

 
「仕事をせずに酒や女で放蕩して薬で酩酊して、それでいい作品を書けるならそれでもいい。
 しかしそんなものが読みたいか?それなら40年前の作品を読んだ方がもっといい。
今からそれをやられてもただの焼き回しさ。」
 
 
「そういう奴らいたな。大好きだった。みんないなくなってしまったよ。それにおれにはできなかった。」
 
 
「そう、できなかったし、できなくてもいいんだ。
できなかったら書けないわけじゃない。
仕事やなにか自分の実人生と結びつけて、なにかが書けるかもしれない。
 それは天才には及ばないにせよ、秀才を越えるものにはなるかもしれない。
そういう意味では生活の危機感や責任てのは、悪くはないんだ。
 今はまだ表現できなくても、5年後、10年後を見据えたら自分の土壌や根拠になりうるだろう。
 そういう意味ではおれは…」
 

セブンクラウンをストレートで注いで彼は続けた。
 

「家族ってのも、悪くないと思っている」


 
★▼▼★▼★★▼★▼★▼★▼★▼★


 夜更け過ぎて家に帰った。
たった十数分だがなんだか無性に長く感じた。

 相変わらず、おれの恋は宙ぶらりだったし、とにかく女々しくて救いのない作品ばかりを書く自分を持て余している状況だ。

 それでもその中に、なにか光が見えるような思いになった。
気のせいなのか?たったの二杯で酔っぱらって気が大きくなっているのか?
東京の真夜中は明るすぎる。

 交差点では信号が明滅している。五叉路だからあっちが止まれば他が動き出して複雑怪奇な場所だ。

交差点の真ん中には、フェンスで囲まれたなにもない緑色の地面の緩衝帯があって、それがこの入り組んだ交通区画のインフラの中でどういった役割を果たしているかはわからない。
昨日、そこに車が停まっているのを見た。そんなことのために君は存在していたのか?
ドッグランのようなものを想像していた。おれはあの無用な緩衝帯のなかで走り回って遊ぶことを想像した。
ドッグラン、ってなんだか哀しみを感じないかい?そこじゃなくても走っていいんだぜ。鉄のカタマリどもは自由に走っていやがる。

「この街のインフラがおれを感傷的な気持ちにさせる」

と言ったミュージシャンの友達をふと思い出した。かつて一緒に旅を廻った奴だ。バイトのことや家族のことを題材にしたロックンロールを演奏していた。
彼はどうしているだろう?去年のツアーの時に神戸で会ったのが最後だった。もうバンドはしていないんだろうか。


 どれが誰にとっての光なんだ?この道は光が多すぎる。そしてその総てが機械的に役割を果たしている人工的な光だ。


    ▼▼▼
 

 もしかして今抱いている気持ちをいつか愚かしく思い出す日がくるかもしれない。

その時のために今ここに記そうと思う。

人工的な光だろうが、その光を見て進むことができる。おれたちのやっていることは真っ暗闇のドブさらいだが、必要とする人がいることも確かなんだ。


「未来?未来なんて、誰にもない。自分で作るんだ」


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2016年5月21日 (土)

友情

「どうした?浮かない顔をしているけど。」
 
「ああ」
 
「昨晩は結局どうなったんだい?」
 
「それは今は言えないんだけどさ」
 
「まあいいけど。笑えるね。まだ夏が来たわけじゃないのにそんな憂鬱な顔をしているのは。」
 
「おれはいいと思うんだよ。だけどお互いの状況が違いすぎる。社会的な格差さえも感じるよ。それでもそれを乗り越えるのは…」
 
「言うまでもないさ。未来がないんだ。」
 
「そりゃあないさ。未来どころか現在だって時間さえも信じていないからね」
 
「君のことをモチーフにして、動物が人間に恋をする物語を書こうとしたことがあったよ。くだらなすぎてやめた。だけどまた君は性懲りもなく恋をしているんだ。笑えるな」

「仰る通りだ」
 
「ああ、隣のお店の娘だろ。彼女は普通の娘さ。君はいつも自分のことを度外視して普通の娘を好きになるな。前の相手もそうだった。君のやってることを寧ろ嫌っているくらいだったからな。
だが、今はもっと悪い。彼女は憧れているんだ。この、クソみたいなヘドの出る世界に。憧れは一番危険さ。己の身を滅ぼす、それこそ未来のない動機だ」
  
「悪くはないはずだ。おれたちみたいにドブさらいのようなことをして泥濘の中で何かを掴む仕事もある。
あの娘のやっていることはそこで掴まえた鉱脈の原石をきれいに輝かせて世間の普通の人にまで伝える仕事だ。そういう人がいなかったら、おれたちのドブさらいも知られることなく打ち棄てられて終わるだろう。」
 
「くだらないね。ドブさらいを知らせなければ知らないような半端な生き方をしているような人間には、一生知られなくたっていいんだ。問題にもならないよ」
 
「君はいつだってそうだな。」
 
「いいか?おれたちの生きているのは憧れなんかじゃない。現実なんだ。
そしておれたちのやっていることは誰に求められることのない形而上的なドブさらいだ。ビジネスじゃないんだ。」
 
「そんなことはわかりきっている。いつもおれたちは無謀なことをやって虚無への供物を捧げているんだからな」
 
「いや、まだわかっていない。あの娘は店をやっているだろう?お客さんが来て時間を過ごして何かを得て帰っていく。それは広義では、いいことなんじゃないか?
だが、おれのやっているこの場所は店なんかじゃない。店をやる気なんかハナからないんだよ。
看板も無いし、メニューもないどころか、この場所が一体何のためにあって何をする場所なのか?みんな愚かすぎて気づいていないんだ。バー?ふざけるなよ。こんなバーがあるか?こんなふざけたバーが。誰もがここを店だと思って勘違いして酒を飲んで金を払っていく。滑稽だと思うよ。」
 
「そうだな。強いて言うなら、この店は人間の愚かさを額縁に入れて見れるように展示している四次元の絵だからな」
 
「彼女のやっていることはそういうことじゃない。店さ。この周りの土地にはくだらないお洒落な店がたくさんあるだろ?くだらない祭りや、くだらないしきたりと、そこから脱したと思ってオシャレな形骸的な店をやっているガキどもだ。オッサンのようなガキだな、おれから言わせれば。地元のジジイババアどもの二世三世のな。あの娘は確かによくやっている。店として。
だがおれたちのやっていることは店じゃないんだ。嘲笑さ。人間どもを吊し上げているんだよ。この土地に棲むジジイババアどものクソみたいな店をおれは全部潰したい。問題にもならないやつばかりだけどな。やり口が違うんだ。」
 
「そんなに言うなよ。」
 
「わかっていないようだな。君は綺麗事が好きなんだ。いつもそうだ。しかし本性はおれの考えと大して変わらない。周りの仲間を観てみろよ。君の仲間は悪意のある人間ばかりじゃないか。」
 
「わかっている。そんなことはわかってるよ。確かに悪意の塊ばかりが仲間で、おれは悪意を愛している。でもそれだけじゃないと思う。なにかがあるんだ。悪意は美しい。人間は愚かだ。その狭間に苦しみがあって、何かがある。それをつかみたいんだ。あの娘のやっていることはおれたちのやり口じゃない。だからこそおれはその狭間に秘密があると思っている」
 
「君の得意分野だな。希望的観測と絶望視の狭間でドブさらいをするのは。気がすむまでやってみたらいいさ。ちょうど面白い事件がなくて退屈していたところだ。」
 
最後に彼は
「ほら、苦い恋の味がする珈琲があるよ。飲めよ」

と言われた。

とても苦い恋の味がした。

「苦い。とても苦いよ。それでもおれは好きなんだ」

くっ、と言って彼は笑った。

「綺麗事のほうが、受けるんだろうな」
 

そして「これでも読んだほうがいい」と言って、武者小路実篤の「友情」という小説を貸してくれた。

「純情な恋とは何かを教えてくれるぜ」

 


 
(※この物語はフィクションです。実際の人物・団体とは一切関係ありません)

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2016年5月20日 (金)

密漁 / スペースデブりな朧月

おれは今真夜中の公園でベンチで寝っ転がっている。
これからあと30分後くらいにスタジオのリハーサルが始まる。

なんか他にするべきことがあるんじゃないかと思いながら歩き始めた。公園の池は夜で真っ黒だ。星もみえない曇りの夜だ。

ずっとポジティブでいるのは難しいし気持ち悪い。
だからたまに夜中に寝っ転がって、外気を呼吸して、なんか違うなって思って歩き出すとちょっと違う気分になって、別に前向きじゃないんだけど歩こうかなって思って歩いているよ。
 
 
 

★▼▼▼▼▼▼$$$$▼


 
 

 今日、密漁を誘われた。
 前から誘われていたんだが、夏が近づいてきて本格的に密漁の季節なんだって。
 何かの例え話じゃないよ。本当の密漁だ。アワビとかサザエを盗るんだって。

 海で遊ぶふりをして、密漁をすることを想像したら笑ってしまった。

 密漁は悪いことだ。でもすごく魅力的に感じる。
犯罪を犯すと、高揚感と不安感の狭間でふわふわした浮遊感を味わう。
そういったことは憂鬱な精神の安定に役立つ。

少年が犯罪を犯したくなる気持ちってそんなことじゃないか?

憂鬱な精神の安定に役に立つのは、働くことだ。働くとメンヘラが治るって言ってるのを聴いたことがある。似たようなものだ。

働いているのと犯罪を犯しているのは程度の違いこそあれど、なにか根本的な人間の社会にコミットしようとする活動として、大して変わらないと思うんだ。


かつて危険な植物を育てている農家さんのお家にお邪魔したときそう思った。
農家さんはとても熱心に植物を育て、乾かし、小分けにパックしていた。

素晴らしい職人の手つきだった。惚れ惚れしたよ。

おれもなにか手伝うよ。
そう言ったら農家さんは

「いいんだNG。そこにいて見てろ」

と言った。

 あの夜を思い出した。


 素晴らしい夜もある。

 愛に溢れてこんな幸せな気持ちがあったのかって見つけることができるような。


 大抵はいつも逆だ。

 美しかったり素晴らしいことを求めすぎてしまって、ヒドイ憂鬱に襲われたり。


 毎晩素晴らしくなくていいよ、ひんやりした夜の窓やベンチに身を寄せて、じっとしていたい。

誰かに何かを言いたいときもある。

そういうときにこのblogを書くことにした。

 例えばこういう中途半端でムダに長い文を誰かに伝える方法が、却って現代には少ないし、誰もがこんな長さの気持ちは誰にも伝えられなかったり、やり場がなかったりしてるようにも思う。

そういうときに酒場や酒が機能しているようにも思うけど。

 おれは真夜中の公園の夜を映している池に、石を投げ込む感じで中途半端な気分を反映させている。

スペースデブリな朧月夜。

無用、不要ということが美しいこともある。

さあ、音楽の練習の時間だ。

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2016年5月18日 (水)

呼吸するダクトの暗闇をまさぐりながら

 一日中バイトして終電車で家まで帰る。

 何かをやり忘れたような気がする。

おれはバイトをしてて一番好きな時は、最後に店を締めるときにドデカイごみ袋を外のダストボックスに捨てるとき。

ダストボックスの蓋を開けるときだ。

今日が終わって、自分自身の時間が始まるから。

室外機とかダストボックスとか好きなんだよ。

 でもこの話は前にも書いたような気がするな。

今日は雨も降って大してお客さんは来なかった。

最後終わり間際に、かつて働いていたMさんがバイクに乗ってやってきた。

Mさんはうちのレストランを辞めたあと、エアコンのフィルターの清掃の仕事をやっているんだって。楽しそうだな。

閉店後、Mさんとヴァンパイアホストの店長、アメリカ人狩りの料理長とエアコンのフィルターを取り外して修理を始めた。

店舗用のでかいエアコンのフィルターを外して中を覗きこんでゾッとした。

天井からどこまで続いてるのかと疑りたくなるくらい大きなダクトの穴があった。
それは全くの暗闇で。

大きな暗闇の穴が冷たく生臭い空気を吐き出したり吸ったりしていやがる。

 おれはハアハアいった。こういうときにアルバイト面してるのが難しい。

いいか?わかるかい?

①大きな穴のあいた暗闇が

②生臭い冷気を

③呼吸している

④人工物のなかで

 
という自分の決定的な好みの条件が揃っているのだった。

今書いてて気づいたけど、おれは②の「生臭い冷気」が好きな性癖をもってると自分でも初めて知ったよ。

 そしてあろうことかMさんは(既婚者二児の母)は真夜中に作業着を着て、その暗闇の穴に手を伸ばした。まさにプロのエンジニアの手つきだ。

「あー、ダメですね。壊れてる。全部吸い込まれちゃうやつです」


なんだって?!?!?ー?!?

おれはハアハアいった。


①女性が作業着で

②プロっぽい手つきで

③機械をまさぐって

④暗闇を診断して

⑤全部吸い込まれちゃう

⑥ダメですね

 気絶しそうなくらいヤバイシチュエーションだけど、君にはわかるかな

おれ自身もうまく説明できないよ。


 でも、好きなんだ。

 好きになることに理由なんてない。

 自分が感じたり、愛したことをありのままに伝えようと思うんだ。冗談じゃなくてさ、きっとわかってくれる人がいる。

わかってくれなくてもいいよ。

 ただ、いつだって、想像できないような場所から魅力的な現在は顔を出すんだ。
その時に君のことが好きだって心から想う、その気持ちを忘れたりはしないよ。


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2016年5月16日 (月)

地震てなんなんだい

 曲を作ってた。だんだんできてきて、歌詞が変わってきて、やった!やっとできた!!!!と思ったところで地震が来た。

 おれん家はめちゃくちゃ揺れたんだ。川沿いだからか?五階だしな。

曲がなんとなくできた興奮と地震の揺れでワケわからなくなってしまって、とりあえずトイレで小便をした。何もかもが揺れていた。ゆらゆら。

 とりあえず曲作りを中断して外に出ようと思った。街に出ると、人々はザワザワしつつも平然顔だった。おい、大したことなかったのかい?


とりあえず夜更けに行ってみた。夜更けの人々は平然顔で酒を飲んでいた。おい、なんもなかったのかい?おれは平然を装って座ったが内心興奮していた。それが地震によるものなのか、曲ができてきたことによるものなのか、もうわからなくなったきた。

 常連のシャイニーが近寄ってきて「NG、今夜は奢るよ」と言ったきた。シャイニーには貸しがあるんだ。でもおれはまったくもって奢られたいような気分ではなかったが、まあ、いいかと思って素直に2杯ハイボールを飲んだ。

なんなんだ?今夜は変な気分だ。

 オバチンが来て

「ねえ、これ見て」

と写真を見せてきた。オバチンが金髪だった頃の写真だ。サイヤ人みたいだったが、そうは言わなかった。

「似合ってるね」

「でしょ!?もういいわー!!!」


何がもういいかわからなかったが、特に返答はしなかった。

おれは変な気分だった。

 おれはさっきまで、地震に関する曲を作っていたんだ。

今ここが現実なのか非現実なのかわからなくなっていた。


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2016年5月14日 (土)

ザンパノの道

昨晩、馨子に会った。

 フリージャズ(?)バンドのOMJQの集まりだったんだけど、ピアノのワカメが馨子を呼んでいたんだ。

馨子と会うのはzampanoの最後の脱退のライブ以来だった。
正直ちょっと、いや、かなり、 ギクシャクしたけど、少しだけ話すことができた。

 酒田の乞食の兄貴たちの話や、秋田の山影のキョーダイの話、毎朝枕元に立ってたビリケンさん、鎧のヒデカズさんが一触即発で乱入してきたこと、16%のかおりんがイージー&イージーを歌ってくれたこと、ジョニーのこと。

あんまり多くは話せなかった。馨子は少しだけ笑って聞いていた。


これから長い別れになる。

話すことができてよかった。

さよならだけが人生じゃないけど、というやつだ。


+▼+▼+▼+▼+▼+▼▼★▼★

 終電で浅草橋に帰ってきて、「夜更けの人々」に行った。夜更けにはDがいた。
Dは三年前の蔵前で起こった事件の夜に、事件の直前まで飲んでいた、それ以来だったように思う。Dはおれのことを覚えていなかった。
おれは髪を染めたし、覚えていないのも無理はないかもしれない。
嫌な事件の時の記憶だから、忘れた方がいいのかもしれない。


 その日はバーテンダーのOの誕生日だった。Oは自分の誕生日の13日の金曜日の誕生日には必ず悪い事件が起こる、と笑っていた。

「事件は起こった?」

「いや、そういえば何もなかったな」

おれは、おめでとうと言ってOにプレゼントを渡した。

 キップ・ハンラハンがプロデュースしたアルゼンチンタンゴのアストル・ピアソラがかかった。
「タンゲッティア」という陰気な嘲笑から合唱に変わる1曲目は夜更けの人々にピッタリな気がした。 

 飲んでいると夜半過ぎに、夜更けの隣にあるカフェの女が来た。

 カフェの女は従業員の面接の時必ず好きな映画を訊くんだそうだ。


 おれにも面接のように好きな映画を訊いてくれた。


「フェリーニの道という映画です。ザンパノという旅芸人が、ジェルソミーナというイタリアの田舎の貧農の娘を買って、旅に出る映画で。
ザンパノというムサ苦しいオッサンは街の往来で鎖を引きちぎるどうしようもない芸をやるのね。
ジェルソミーナはザンパノの芸が始まる前にトランペットや歌で出囃子をやるんだよ。
「Arrivato Zampano!」ザンパノが来たよって。

ザンパノはうまくやれないジェルソミーナを鞭打ったり暴力をふるって無理矢理従わせるんだけど、ザンパノの芸を観に来た人たちは、だんだんジェルソミーナの歌の美しさに気づいて人気が出てくるのね。

でもザンパノはそんなことにかまっちゃいないで、酒を呑んだくれて、ジェルソミーナに言い寄ってくる男を撲殺したりして。

そんなとんでもなく乱暴な旅をしているたうちにジェルソミーナは死んでしまうんだ。

ジェルソミーナがいなくなって、よぼよぼになったザンパノは、ふとした瞬間にかつてジェルソミーナが歌っていた同じメロディーを聴く。

そしてザンパノは号泣する。そこで映画は終わり。」

 カフェの女は映画のあらすじを聞いて

「その映画を観たら一週間くらい落ち込みそうですね」

と言った。

Oは「これが面接なら」と言って笑っていた。

 

 
「NGはクビだな」


●*++++++▼★▼▼
 
 ソロツアーで行った酒田の打ち上げでも好きな映画を訊かれたことがある。そのときにも道の話をしたような気がする。
 
 乞食のギターのシン兄は「バックトゥザフューチャー」と言っていた。

シン兄の答えが好きだ。おれみたいに面倒そうな答えをする奴は手に負えないからな。


 おれはひとりになっても鎖をちぎる芸を続けるつもりだ。

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2016年5月13日 (金)

サンダルを投げ出して裸足で眠る女の薬指

 昨日の朝起きてからもうすぐ24時間が経つ。

朝陽の中にいると吐きそうだ。

また中央線を乗り過ごして、まちがって神田まで来てしまった。

 サンダルを投げ出して、シートに横になって眠っている女がいる。
裸足で、赤いペディキュアをしていて、薬指を怪我していた。

 朝の電車の中では、誰もがその女のことを愚か者を見る目で見ている。わりかし美人だったけど。おれはお茶の水で乗り換えた。

 乗り換えるときにお茶の水の堀から流れる神田川が見える。

真緑をしている。

夜見ても朝見ても濁っているのがわかる。
濁った川から隅田川へ、そして東京湾に流れ込む途中におれの家はある。

徹夜で練習しているとこの時間に腹が減って困るんだよ。前の晩に何時に飯を食おうが腹が減る。


まだ通勤ラッシュは始まっていない。

スーツ姿や学生服から見れば、ギターのハードケースを持ったまま眠るような男は、サンダル投げ出したままシートで眠る女よりも邪魔っ気かもしれない。


★★★


 和歌山と大阪の驢馬のライブで、おれのガットギターはブチ壊れた。godinの方だ。
元々調子はおかしかったからなんとなく予感はしていた。1弦だけ音が出ないんだ。ピエゾピックアップがイカれたのかもな。

予感がしていたから、ツアーにはもう一本ガットギターを持っていった。スペイン製のzamapanoでお馴染みに使っていた奴だ。

こいつはよく鳴るんだが、鳴りすぎて驢馬ではハウってしまう。周りの音をサウンドホールから吸い込むように。

カツヤさんのベースの低温は言わずもがな、壺ニャンの声も飲み込んでリバーブに巻いてしまうんだ。

いつもドライで吐き捨てられる壺ニャンの声が、おれのガットギターを通してびしょびしょに残響がかってしまうのは面白いけど不本意だ。

 ライブは五月もある。やっと東京で。

それまでにおれはギターをなんとかしなけりゃいけない。


▼+▼++▼▼+▼▼


 家にたどり着く途中、橋の上で狂った感じの老人が空に話しかけている。  

 ゴミ捨て場にはでかいスーツケースが捨ててある。なんとなく不気味だ。

 こんな文章を読んでおもしろいかい?

 腹が減った。どこかに何かを忘れてきたような気がする。

ライターを毎日なくすように不毛な朝を歩いてちゃダメだ。

だけどおれは会社勤めのスーツや、女子高生みたいには朝の中を歩くことはできない。

まだ昨日が終わっていないからな。

満員電車のなかで裸足で眠るような人間の気分の方がわかる気がする。


こんなメールをともだちに出したりはしないよな。


 


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2016年5月12日 (木)

ゴールの見えない夢

 空港のゲートを過ぎた飛行機搭乗口までの傾斜がかった道を何て言うんだろう?

 あの道でおれたちはバスケットボールをしていた。戦法はラン&ガンだ。すべての試合をそうやって戦ってきたから。ターンノーバーして最初のパスを遠くまで投げた。
 全員が走った。パスは景気よく繋がっていく。おれの役目はゴール下に辿り着いてポジションを確保すること。スクリーンアウトだ。パスもシュートも下手だったが、スクリーンアウトとリバウンドだけはできた。今でもそれはあんまり変わっていないと思う。

 ポイントガードが3ポイントシュートを撃った。それはリングに弾かれて入らなかった。おれはリバウンドした。
ここからだ。ここからがおれの仕事だ。

 だが、さっきまであったゴールはどこにも見当たらなかった。虚空には暗闇が広がっている。もう一度、走り始めた。どこにもゴールは見えない。だが、チームメイトが並走しているのが視界に入るとそれほどの不安感はなかった。

全然、まだ走れる。
問題はゴールがみえないことだ。ついでに言えば飛行機の搭乗時刻も迫っていた。
 

★★★

 午前8時頃に目が醒めた。

 さっきまで観ていたのは夢だと、途中から薄々わかっていた。

夢が暗示しようとしていることも、半覚醒の状態でもわかるようなシンプルでストレートな意味だと思う。


 部屋はめちゃくちゃだ。ツアーから帰ってきた機材を適当にぶちこんだからだ。

夜中帰ってきて、窓を全開にして寝たから5月の強い風がビュービュー入りこんでおれの部屋を洗っている。

風のなかで睡っているような、気持ちいい朝だった。


 また出勤だ。クソが。


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 おれはblogの書き方を少し変えようと思う。
ともだちにメールを書くくらいの気分で少しだけでも送ろうと考えている。

 ともだちへのメールはすごく短い。もう少し敬意や愛想を込めるべきかなとは自分でも思うよ。

突然メンヘラ的に長くなったり、躁鬱で短くなってしまっても気にしないでほしい。いつものことだって。


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ライブ告知の仕方は難しいよな。
それでもライブ観に来てくれる人のために、なんか書くべきだよな。

マジで、ありがとう。

今、驢馬とソロをやってるけど、どっちも観てほしいな。

5/20(金) NGバルバロイ 大塚meets
5/28(土) 驢馬 青山Red Shoes
5/29(日) NGバルバロイ、川合啓介 夜更けの人々(昼間のイベントです詳細TBA)

6/4(土) 驢馬 両国SUNRIZE
6/8(日) 驢馬 渋谷CYCLONE

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2016年5月11日 (水)

旅から帰ってきて想うこと

東京に帰ってきた。
 
 驢馬の関西ツアーを経て、東京に帰ってきた次の日には東高円寺二万電圧でソロライブがあった。

 今日はアルバイトに行った。
朝、電車に乗って、毎日誰かとすれ違っていて何も思わないような街に帰ってきたと思った。

 声が出なかった。ツアーで叫びすぎたんだろうか。5月の連休が終わった後の飲食店は嫌に静かだった。
 

 タイムカードを押す、こうして時間を刻印しながら毎日を過ごしていることを思い出す。
時間、時間、時間を切り取って金にしているけれど、時間と貨幣との交換は不可逆だ。その交換は嘘つきの考えたトリックにすぎない。

 時間を煙と灰にしている、と喫煙者のことを観ていた10代の頃を思い出した。あの頃は何もしていなかったな。
毎日図書館に行って、変な本を探して、見つけたら見つけたでガタガタ震えていた。なんでそんなことをしたのかは思い出せない。

 おれはいつの頃からか図書館の奥にある書庫に籠るようになって、そこで総記と百科事典をア行から片っ端に読んでいた。妙に落ち着いたものだ。
でも図書館から一歩出るとまたガタガタと震えが来ていた。何が怖かったのだろう?

 苦し紛れにアルバイトを始めた。幼なじみと一緒に神保町にあるレストランに面接に行った。面接の時間に15分遅刻したが、おれたちは雇ってもらえた。そのとき初めて出会ったバイト先の上司は元々舞台関係者でバンドマンで、ホールに出るときはステージに出るような気持ちで歩け、と教えられたものだ。


 アルバイトを始めてからおれの震えは止まった。

なぜだろうか?

きっと気が紛れたからに違いない。あの、自分が存在しているのか、この世からいなくなりたいような気分が、アルバイトをしていると嘘みたいに亡くなる。

覚えているかい?


 働くのをやめろって言ってる訳じゃないから誤解しないでくれ。実際におれの周りには一切働かない奴が何人かいた。そいつらは精神をやられてトチ狂った。

狂わない友達が二人だけいた。そいつらはミュージシャンになった。本意か不本意かは知らない。

気をまぎらわせてはダメだ。何かをやっているような気になってはダメだ。忘れてしまう。
確かに、働いた方がいいけれど。本当に望んだことを忘れないやつだけが、それをできる。

そう、毎秒毎秒思いながら皿を洗ったりするのは久しぶりだと苦痛だった。

慣れるのもマズイけれど、2日もすれば慣れる。

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