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2016年4月 9日 (土)

welcome to da Back Town

旅のことを書くことは、しかも旅を終えて帰ってから書くのはとても難しい。それでも書こうと思ったのはケラワックの「孤独な旅人」という本を読んでいて、ケラワックのような「自然な口語体」で書くなら、おれにも少し書けるかもしれないとおもったからだ。
 ケラワックは叩きつけるような、吐き出すような文体で「宇宙の優しさを説教することを義務」だと考えているらしい。常々、宇宙は優しくないものだと思っていたけれど、そういう視点もあるのかな。もし宇宙が優しかったら、と考えるとよくわからないが穏やかな気分になれる。

 おれのひとりで行った演奏旅行はさくら観光バスという格安の高速バスで始まった。さくら観光のバスは四列シートで少し狭いんだ。春休みなのか学生風のガキどもでシートは満席だった。なんせ格安だからな。ガキどもと一緒に並ばされて集合場所からバスまでちょっとした距離を歩かされるのは閉口した。
 おれは旅の前に銀髪に染めて、真っ黒い革のジャケットでリゾネイターギターの入った重たいハードケースを係員を強引に言いくるめてバスの下部のトランクに載せた。学生風のガキのアルバイトは厄介者に当たってしまったという顔をしてたよ。大丈夫だよ、と心の中で呟いた。おまえのようなアルバイトに会うのは初めてじゃないが、きっとおまえがおれに会うのは今回で最後だ。

 東京から仙台までは高速バスで五時間ちょっとだ。午後四時頃に着いた。仙台の駅の東口には半田屋という食堂がある。ここが安くてうまいんだ。駅の近くで働いている人たちが急いで昼飯を食いに来るような場所。おれは半田屋が好きで、今回はここでしこたま食った。鯖の味噌煮とかな。鯖の味噌煮が好きなんだ。

 そこから歩いて会場に向かった。一日目のライブはバーで、仙台にすむベテランのロックンローラーDuck Tetsuyaさんから紹介していただいて店の周年ライブに出演する。国分町のど真ん中にあるビルの六階で、かなり危なげな地帯だった。国分町は東京で言うところの歌舞伎町のような場所らしい。飲み屋と、風俗店が乱立していて、こういう場所は妙に落ち着くものだ。

 会場でリハーサルしていると、早くもお客さんが来ていた。賑やかな女性だった。リハーサルのPAは卓がステージにあってミュージシャンが自分でやれという。 馴れたものだが、始めてくる場所だからどれくらいの音量で行けばいいのかわからなかった。常連のお客さんとユニティする目的も含めて、リハーサルの音のバランスを聞いていてもらった。ブルースが好きだという。珍しい女性だ。ライトニンのmojo handをひとくさり聴いてもらった。

 開演してみると、危なげな立地の会場にも関わらず、中学生の子どもとお父さんお母さんでやってるファミリーバンドが出演してブラックサバスを演奏したり、ほのぼのムードだった。知っている人は歌舞伎町のライブバー、ゴールデンエッグを想像してもらえたら近いかもしれない。もう少し綺麗だが。西荻のwjaz.とかにも雰囲気は似ている。こういう場所はなんだかんだ得意だ。

 驚くべきことに二番目にDuckの親分が出演した。Duckさんは、福島や仙台、武蔵境stattoなどで、zampanoと対バンしてた以来だ。zampanoじゃなくなったおれを快く歓迎してブッキングしてくれた。本当に感謝している。Duckさんはどんな場所でも、どんなときでも、ライブをやりはじめるや否や即座に会場をブチ上げてしまう。恐ろしいパフォーマンス力を持ったミュージシャンなんだ。Duckさんの後は正直やりづらいが、やりがいがある。素晴らしい対バン相手だよ。

実はこの日は、宮城県涌谷町のクルーMEGALOMANIAのRe-voltarが一曲おれのステージに参加することが決まっていた。前回の秋田行程で、difraktoの山影のキョーダイとトラックメイカー/DJの山田さんの粋な計らいで、秋田四階のクラブイベントの最中に下のフロアでギターを弾かせてくれたんだ。そのときにサイファー的に通りがかったラッパーがみんなフリースタイルしてくれた。そうして出会ったのがRe-voltarだ。親愛を込めてレボ君と呼ぶようになった。
 秋田で一回だけセッションしたレボ君と急激に意気投合して、今回の仙台ライブでも一緒にやろうということになった。彼はフリースタイルタイプのラッパーではないと思う。でも何か、スパークしたい、させたいモノがあったんだろう。おれはラッパーが好きだ。彼らはミュージシャンの中でもちょっと異質だ。ボクサーみたいなものだ。

 そんな風に企んでやってきたが、バーで演奏される音楽は、有名な洋楽のカバー曲やジャズやオールドロックンロールやカントリーで、ちょっとヒップホップなムードとは違ったかもしれない。でも、おれたちはやった。ロックンロールやジャズが好きだったら、本質的な意味ではヒップホップも行けるんじゃないかな、と思ったんだ。それにおれたちはギターとマイクだけで生演奏だ。レボ君、すごいガッツのあるMCだった。おれはガッツのあるやつが好きさ。果たしておれたちの演奏はバッチリ受けたよ。

ライブが終わって、みんなでセッション的にやろうと言うときに、やめようかどうか悩んだが、やっぱりもう一度レボ君とステージに上がった。常連さんのミュージシャンがベースとドラムスで参加してくれた。非常に上手いプレイヤーだった。Hideawayという曲を一瞬ででっち上げて、Hookを作っておれが歌い、後はレボ君が何バースもラップした。フリースタイルもう出てこなくなっても、おれは彼に「出てこなくてもいい、もう1バースラップしろ」と言った。NGだよな。でも彼はやったんだ。彼もまた素晴らしいプレイヤーだった。

 ギグがハネた後はレボ君と彼の後輩のダンサーと朝五時まで飲んだ。涌谷町は仙台から車で一時間弱かかるような遠い町で、そこからわざわざ来てくれたんだ。

 あまりにも面白そうだったので、レボ君に色んな話をインタビューした。初めてラップしたときの話、田んぼの真ん中のライブハウスを自分達のイベントで満杯にしたエピソード、あの大きな地震311の話、即座にリリースした曲、レーベルを立ち上げてプレスと流通にかけた経緯、フライヤーが余って機材車で田舎道を走りながら窓を開けてフライヤーを道端に文字通り「撒いた」話、東京のツアー、そして秋田のツアーで、そこで偶然変なギタリストに出会ったんだと。

 涌谷町は田舎だって彼は言ってたが、冗談じゃなくて、例え話じゃなくて、地方からとんでもない力を持ったミュージシャンが現れてきている。そして彼らは別に「東京」に行って活動してビッグになろう、というのとは違うんだ。違う物語が色んな場所で始まっている。山形県酒田のシン兄が言っていた。「ここでいい、ここでねば気づかねえことがたくさんあった」そういう人と出会えて嬉しいよ。
おれは東京都台東区柳橋から来た、と今回のツアーでは最初に言うようにしていた。漠然とした東京じゃなくて、シン兄に酒田のブルースヒロがあるように、山影のキョーダイに秋田の夜叉鬼としののめがあるように、レボ君に涌谷町のBack Town Recordsというレーベルがあるように、おれにも浅草橋の夜更けの人々と、ひばりヶ丘の根津とやっているm.i.l.kがあって、そこで作った音楽を旅に持ってきている。そう言い切りたかった。

 どうやらおれたちは飲み過ぎたようで、朝方の仙台はマジに寒かった。次の日に共演する片岡フグリから着信があったが、おれは全く気づかなかった。とにかく、いい夜だったよ。

 

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