« SNTRM | トップページ | さまよう人々が持っていないもの »

2014年4月 6日 (日)

もう一度太陽に会えるなら

 三年付き合ってた彼女と別れた。

フラれた、というのが正しい。

 理由は明快で、彼女としては安定した生活を持った伴侶を見つけたいということだった。
それはもうおれにはできないことで。
粘ってみたけれど結論としては別れるしかなかった。
バンド風に言うと方向性の違いというやつ。
 
 彼女はこの間まで女子大生で、春に卒業したばかり。
初めて出会ったのは前のバイト先で、神保町のレストランだった。
あの頃のことは過去の記事にもよく書いた。
職場には役者志望や声優志望にミュージシャン、店を持とうとしてるやつとか色んな奴がいたが、彼女はその中にあっていわゆる「ふつう」の女の子だった。
付き合うまでにろくにしゃべった記憶もない。
 

 確か驢馬が始まったばかりの頃で、当時おれは25、彼女は19だった。とても若く、未来にあふれている女性の人生の時間をNGと過ごすのはどうかと思って無駄に逡巡していると、うちのベーシストが

「NGくんはどうでもいいけど、彼女はまだ若い。(ダメだったとしても)彼女の方はきっと立ち直れるし、やりなおせるから大丈夫だよ」

という意味のことを言われて、なぜか勇気づけられたことを覚えている。

 結果的にはベーシストの言っていた通りだった。別れ際、彼女はおれを踏み越えて颯爽と去っていった。

 好意を持っていることと人生を共にすることは違う、ということをはっきりとおれに言い渡した。そのとき彼女と初めてふたりきりで飲んだことを思い出した。

 初めて飲んだとき、薄暗い居酒屋で、突き出しをつついていたおれに、彼女は好意を持っていることをはっきりと伝え、少しも怯えているようには見えなかった。
おれはなんだかんだ言い訳をして彼女とふたりになる状況を避けていたダサイやつだった。逃げるのはやめた。
彼女の気っ風のよさに惚れた。



 それから三年間楽しかった。
彼女とはいわゆるふつうの恋愛をしていたと思う。
 おれはなるべくダラシナいことを止めた。バンドマンであることと、自暴自棄に自滅的であったり享楽的であることは違う。それでも乱暴だったし、享楽に弱い、根っからの傍若無人ではあったけれど。
ふつうの社会生活を送れるようにはなれなかったが、「THEバンドマンの彼氏」みたいには振る舞わず、できる範囲で人間としてちゃんとしようと思った。仁義を通す、というか。でもそんなのできてねーなー

しっちゃかめっちゃかで爆裂な毎日に彼女が無視しながらも寄り添ってくれたのは、彼女の芯の強さだと思う。あいつは全然動じなかった。おれはなにかのオバケのように人を脅かしてばかりなのだが、オバケに動じない女の子とは仲良くなれるつもりだ。

 何年か前、おれの誕生日の日に、待ち合わせをしていたら大雪になってしまった。
彼女は傘をちゃんと用意していて、用意がいいね、と言うと
あなたとデートする日は必ず雨が降るので必ず傘を持ち歩くようになった、と言われた。うれしかった。

ふたりでバナナ鰐園に行ったときも嵐だった。おれは友人から借りっぱなしのSMENA8M(だったかな)でたくさん写真を撮ったのだけれど、天気が悪くてほとんど失敗の写真だったよ。

http://barbalomography.tumblr.com/image/21221240048

彼女には撮るな、と言われたので彼女の写真はほとんどないのだ。バナナワニ園に冷たい雨が降って、バナナもワニもじっと動かなかった。

 
千葉の御宿、太陽という民宿に泊まって、ラム酒を飲み過ぎたあとにふたりで砂浜まで歩いた。
はっきり言ってその日の海は大荒れで、笑って手を引く彼女が心中を誘っているようでめちゃくちゃ怖かったが、朝起きると覚えていないという。そういうやつなんだ。

 結局、彼女と生涯をともにすることは無かったのだが、彼女が言うように愛情と実際の社会生活を供にすることは少し違うと思う。
ただ現実の生活に優るものはない。すべてのものが歯車に噛み砕かれてしまうが、だったらあの頃思った純粋な気持ちはどこに行ってしまうんだろうか?

すべては現実の前にすりつぶされてなくなるのか?



感情は思い出とともに、歌と音楽ともにある。

その思いをみんなが自分のところにとっておいて、いつでも再生できるようにおれたちは音楽を録音しているよ。

だからどうしても非現実的なんだってよ。

気持ちが変わらない、変えられないそのことの儚さを思い知った一日でした。









|

« SNTRM | トップページ | さまよう人々が持っていないもの »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/187985/55668967

この記事へのトラックバック一覧です: もう一度太陽に会えるなら:

« SNTRM | トップページ | さまよう人々が持っていないもの »