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2014年1月 9日 (木)

よう、そして天まで飛ばそう

祖父が亡くなった。

 
 祖父が危篤だという知らせを受けたとき、真っ先に行こうと思った。以前に同じような事態でおれはバイトを休まなかったんだ。そのことが後になってあまりに甚大な後悔をもたらしたので、おれはバイトを即刻忌引きした。
 
(そのことに関してはいろいろ試行錯誤する部分もある、もしライブだったらおれは休まないだろう。でも仕事として責任をもってやってる人ならアルバイトだって休めないかもしれない。軽々しい立場だからできる行動とも言えるかもしれない。でも、「おれ別にバイトだし!あとのことなんか知ったこっちゃねーよ」)
 
 知らせを受けたのは夜九時頃、新幹線は終わっていた。おれは駅まで走りながらスマートフォンで高速バスを予約して、23:30池袋から直江津行きのバスに乗った。
 
一時間ほどして高速バスの中で祖父の訃報をメールで受けとった。


 
 祖父は偉大な酒飲みだった。体が頑健で大いに飲み、喋る。
寺の住職だったが「あまりの酒飲みたさに読経が速すぎる」というエピソードをおれは愛していた。ラッパーみたいだ。「寺の坊主のよう Snare Drums 木魚 お経のBuddha Style Rhyme Flow」だ。
おれが研究課題としていた音楽芸能「ゴゼ」は、新潟県高田の「高田ゴゼ」を扱った。祖父は幼い頃、門付けに来たゴゼの手を引いて(ゴゼは盲目のため)、家々を案内したという。
ブルースに憧れていた孫はそのエピソードに盲目のブラインドレモンジェファーソンの手を引いたライトニン・ホプキンスを重ね合わせてしまうのは難くなかった。愚かなものよ。
胸部に病巣が見つかった後も祖父は手術を拒否して、酒を飲み続けたという。家人は逡巡したが今まで水のようにガブガブと飲んでいたものをいきなりやめさせては、それこそ「死んでしまうかもされない」と思ったようだ。確かにおれもそう思う。
さらに悪性腫瘍も発見されたのが去年の暮れだ。その手術も拒否。この時点で会いに行くべきだったが、おれにはやるべきことがあった。無論、音楽であり、屍ババアXツアーの直前だったのだ。まさかジジイが屍になるとは思わなんだ。

突然倒れ、そのまま駆け足で逝ってしまった。
おそらく当人もそのような死に方を望んだからこそ、手術を拒否したのではないかと思う。

八十を越えていたが、背丈はNGより低いくらい。当時の日本人としては相当高身長だったろう。
 
おれの身体の頑丈さと酒好きはおそらく祖父から継いだものだろうと思う。ただ酒の強さは比較にならないほどだった。対話が好きな人だった。「月月火水木金金いつでも酔いつぶれてる」というJackSwingの歌詞は実は呑んでるときに祖父から教わった言葉だった。
「月月火水木金金」とは戦時中の教育勅語。休みなく訓練しろというわけだ。祖父は間違いなく、「休みなく訓練」し続けている老兵だった。
 
 
 成人した後に初めて祖父と飲んだことを覚えている。
 
田舎だけあって、午後五時頃から夕餉が始まり一杯。まずはビール、あっという間に瓶が空き、日本酒の熱燗。新潟は米所だけあって地元の酒が豊富であった。叔父はウィスキーを好むので隣からウィスキーも勧められる。まだ七時を回ったところ。食膳は下げられ、テレビに文句をつけながらまだまだ飲む。祖父のとっくりは浮いたままだ。飲み干せというわけだ。十時頃、さすがに酩酊して「風呂に入る」と言って一時休戦。旨い、が、もうキツいぞ。
風呂から上がると他の親類がみな床に入った後。祖父が冷蔵庫の瓶ビールの栓を開けている。
「酔い冷ましに一杯やろう。」
酔い冷まし?の使い方がおかしい。祖父にとってビールはたぶんコカ・コーラのような清涼飲料水と大して変わらなかったに違いない。デザートというわけだ。
夜中の台所の冷蔵庫の隣にある上がり框に腰掛けて乾杯した。
 

 祖父はおれにとっては少し遠い存在。だから憧れもしたし、このように書けるとも思う。自分と非常に気質が似ている人だった、と勝手に思っている。
 
 
 際には間に合わなかったが、躊躇わず会いに行ってよかった。
言葉を交わすことはできなかったが、黙って、酒を飲まない会話を真っ先にできたと思った。

後のこと、とりあえずは祖父の遺したお酒(まだ呑むつもりだったのだ!)を飲み干してから考えようかと思う。
 
(この文章はあとになったら消すかもしれない、でも今は書いておきたかった)

南無阿弥陀仏。



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